「国力研究会」とは、2026年5月に麻生太郎副総裁ら自民党有志が発起し、高市早苗首相の公約実現と党内結束を図る目的で設立された議員連盟です。入会届は320人超(自民党国会議員の約8割)に達し、初会合は5月21日に開催されました。この発足を受け、村上誠一郎前総務相が「大政翼賛会みたいでナンセンス」と公開批判し、不参加を表明したことで党内の亀裂が改めて可視化されています。
この記事でわかること
- 国力研究会の目的: 高市政権の公約実現と党内結束の可視化を狙い、麻生太郎・萩生田光一・茂木敏充らが発起人となって設立した議員連盟。
- 村上発言の構図: 「大政翼賛会」批判の背景には2022年の「国賊発言」処分以来の麻生氏との確執と、8割参加が生む同調圧力への警戒感がある。
- 非主流派の動向: 石破茂元首相ら旧石破政権の中枢メンバーが不参加とされ、「主流派 vs 非主流派」の対立構図が参院選に向けて先鋭化する可能性がある。
国力研究会とは何か|設立の目的と発起人
「国力研究会」は、高市早苗首相が掲げる「Japan is Back」路線の政策推進と、党内における結束の可視化を目的として2026年5月に発足した自民党の議員連盟です。発起人には麻生太郎副総裁・萩生田光一幹事長代行・茂木敏充外相が名を連ね、2025年総裁選で争った小泉進次郎防衛相・小林鷹之政調会長も加わっています。
初会合は2026年5月21日に開催され、米国のグラス駐日大使を招いた構成が注目を集めました。高市政権が日米関係の強固さを対外的にアピールする狙いがあるとみられます。設立趣意書には「いま求められているのは現実的な国力の強化」という旨が記されており、経済安全保障・防衛力強化・情報ガバナンスをテーマとした政策推進グループとして機能する見込みです。
会長については事務局の山田宏参院議員が「麻生氏以外で決まっている」と説明しているものの、初会合時点では未公表です。麻生氏が発起人にとどまり会長を別の人物に委ねた背景には、「麻生傀儡」との批判を避けながら実質的な影響力を保つ老獪な役割設計があるとみられます。
この疑問について整理すると、以下のとおりです。
Q. 国力研究会とは何か、誰が作ったのか?
A. 2026年5月、麻生太郎副総裁・萩生田光一幹事長代行・茂木敏充外相らが発起人となり設立した議員連盟です。高市首相の政策推進と党内結束の可視化を狙いとし、初会合は5月21日に開催されました。
設立の経緯が把握できたところで、次に注目される「参加者数」の実態と、その政治的意味を掘り下げます。
320人超が加入|自民党議員8割参加の実態と「踏み絵」構造
山田宏参院議員(事務局)によると、入会届は320人超に達し、自民党国会議員の約8割に相当するとされています(※山田氏の発言に基づく数値。公式会員名簿は未公表)。
参加割合のイメージを示すと以下のとおりです。
この数字は単なる規模感にとどまらず、重要な政治的意味を持ちます。「誰が参加したか」「誰が距離を置いたか」が党内で可視化されることで、事実上の踏み絵として機能しているとの見方が広がっています。
(編集部分析)任意参加とはいえ、8割超が加入する議連に参加しないことは「高市政権に距離を置く」というシグナルとして受け取られかねません。2026年参院選に向けて各議員が「主流派」に身を置く実利的動機が働いた側面もあります。「保守派の結束」という名目の裏側に、事実上の支持層リストアップ装置としての機能が重なっている構造は否定しにくいと言えます。
Q. 国力研究会は本当に「踏み絵」なのか?
A. 「誰が参加し、誰が距離を置いたか」を可視化する仕組みとして機能しているとみられます。任意参加とはいえ、参加しないことが「反高市」のシグナルとなりうる構造は否定しにくく、事実上の踏み絵として機能しているとの指摘があります。
この「踏み絵」構造への批判として最も注目を集めたのが、村上誠一郎前総務相の発言です。
村上誠一郎「大政翼賛会みたい」発言の真意と歴史的背景
2026年5月19日、村上誠一郎前総務相は「なんで大政翼賛会みたいな会をやる必要があるのか。まったくナンセンスだ」「なんで俺が入らなきゃいけないの」と公言し、不参加を明確にしました。
「大政翼賛会」とは1940年に全政党を強制解散させて生まれた戦時全体主義組織であり、戦争遂行のための国家統制機構です。村上氏はこの言葉を持ち出すことで、「異論を持ちにくい空気が作られようとしている」という強い警戒感を示したとみられます。
ただし、両者の性質を客観的に比較すると、以下のとおり本質的に異なります。
二つの組織の性格を整理するために比較すると、以下の違いが浮かび上がります。
| 比較項目 | 国力研究会 | 大政翼賛会(1940年) |
|---|---|---|
| 設立経緯 | 有志議員による任意の議員連盟 | 全政党の強制解散により設立 |
| 参加形態 | 任意参加・法的制裁なし | 事実上の強制・不参加は政治的排除 |
| 目的 | 政権公約の推進・党内結束の可視化 | 戦争遂行のための国家総動員体制構築 |
制度的には両者に大きな隔たりがあります。一方で、8割超の議員が加入する実態が持つ「空気の圧力」という観点では、村上氏の問題提起が一定の説得力を持つことも確かです。
Q. 村上誠一郎氏が「大政翼賛会みたい」と批判したのはなぜか?
A. 8割超の議員が加入する巨大議連が「反対意見を持ちにくい空気」を作ることへの警戒感を示したとみられます。ただし大政翼賛会は1940年の戦時全体主義組織であり、任意参加の議連とは性質が根本的に異なります。
Q. 大政翼賛会と国力研究会は何が違うのか?
A. 大政翼賛会は全政党を強制解散させた戦時体制の産物です。国力研究会は任意参加の議員連盟であり、不参加への法的制裁もありません。歴史的文脈で同列視することには大きな飛躍があります。
村上氏がこれほど強い言葉で批判した背景には、麻生氏との長年の確執があります。
麻生太郎と村上誠一郎の確執|「国賊発言」から続く構造的対立
村上氏と麻生氏の対立の起点は2022年9月にさかのぼります。村上氏は安倍晋三元首相の国葬に反対する文脈で「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と発言。自民党の党紀委員会は同年10月、「党員としての品位をけがす行為」として村上氏に1年間の役職停止処分を下しました。
安倍元首相と盟友関係にあった麻生氏にとって、この発言は深刻な亀裂を生むものでした。保守主流派の反発は強く、旧安倍派議員を中心に村上氏への批判が広がりました。
2024年、石破内閣が発足すると村上氏は総務相として入閣します。石破氏が「ポスト求めず筋を通した」村上氏を重用したこの人事は、旧安倍派・麻生系議員から「当てつけのような人事」として強い反発を受けました。
こうした経緯を踏まえると、今回の「大政翼賛会」発言は単なる制度批判ではなく、麻生氏が主導する議連への構造的な反発として理解する必要があります。村上氏は過去から一貫して「論理的におかしいことはおかしいと言い続けた」と主張しており、その姿勢が今回も表れた形です。
Q. 麻生太郎と村上誠一郎の対立の起点はどこか?
A. 2022年9月、村上氏が安倍晋三元首相を「国賊」と発言し、自民党は同年10月に1年間の役職停止処分を下しました。安倍元首相の盟友だった麻生氏との溝はここを起点に構造化しています。
個人的な確執の文脈を押さえたうえで、党内の「非主流派」全体の動きを見ていきます。
参加しなかった議員たち|非主流派の動向と党内構図
複数の報道によると、石破茂元首相・岩屋毅前外相らが国力研究会に参加しない方針であるとされています。林芳正・森山裕らについても同様の構図で距離を置いているとの見方があります(※公式会員名簿が未公表のため、個別の不参加は確認中)。
不参加とされる顔ぶれには共通点があります。いずれも「前・石破政権の中枢メンバー」であり、高市政権から見れば非主流派にあたる政治家たちです。前回の総裁選で高市氏と争った石破氏、その政権を支えた岩屋氏・林氏・森山氏らにとって、麻生氏らが主導して作ったこの議連は「高市再選を固め、自分たちを牽制するための踏み絵」に映ると考えられます。
この構図は2026年参院選に向けてより先鋭化する可能性があります。主流派が320人超の数で結束を固める一方、非主流派がどこまで組織的に独自の立場を維持できるかが、次の党内権力闘争のバロメーターになるとみられます。
Q. 国力研究会に参加しなかった議員は誰か?
A. 石破茂元首相、岩屋毅前外相ら旧石破政権の中枢メンバーが不参加とされます。林芳正・森山裕らについても同様の構図で距離を置いているとの報道がありますが、公式名簿は未公表のため「※確認中」です。
非主流派の動向を踏まえたうえで、この議連が持つ構造的な意味を掘り下げます。
(編集部分析)「保守純化装置」としての国力研究会|高市一強が意味するもの
(編集部分析)国力研究会の本質は、単なる政策勉強会ではなく「保守純化装置」として機能している点にあると見られます。高市政権が掲げる経済安全保障・脱中国依存・防衛力強化というテーマは、その性質上、中国とのパイプを重視する議員が参加しにくい設計になっています。名指しで「親中派を排除する」とは言わずとも、テーマが自然なふるい分けとして機能し、対中警戒派が集まる構造が生まれているのです。
同時に、発起人に名を連ねた麻生氏・萩生田氏・茂木氏らが2025年の総裁選で争いながらも今回は結束している点も重要です。来年の総裁選(再選)を見据えて麻生氏が主導した議連への加入は、「次の総裁選に向けた推薦人の確保・確認」という側面も持ちます。「誰が参加したか」「誰が距離を置いたか」の一覧が、そのまま党内における忠誠リストになる構図です。
(編集部分析)一方で、初会合にグラス駐日大使を招いた点は、この議連が「親米保守」の文脈に位置することを示しています。日本の防衛・情報・経済安全保障の強化を掲げながらも、その方向はアメリカとの同盟強化を基軸としたものであり、「米国から真に独立した日本の政治勢力」とは性格が異なります。自民党内で対中警戒・親米保守が主流派を形成することの意味は、日本の国益という観点から冷静に問い直す必要があります。真に日本のための政党政治は、今後の政治的な展開の中でこそ育まれていくものではないでしょうか。
Q. 国力研究会は本当に「踏み絵」なのか?
A. 「誰が参加し、誰が距離を置いたか」を可視化する仕組みとして機能しているとみられます。任意参加とはいえ、参加しないことが「反高市」のシグナルとなりうる構造は否定しにくく、事実上の踏み絵として機能しているとの指摘があります。
本件に関する一次情報は以下を参照ください。
参考情報
- 日本経済新聞「高市首相支える自民議連「国力研究会」発足へ 麻生・萩生田氏ら発起人」(2026年5月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA062RN0W6A500C2000000/ - 毎日新聞「村上誠一郎総務相、過去の「国賊」発言は「遺族に謝罪した」」(2024年10月)
- 東京新聞「「安倍元首相は国賊」発言で処分 村上誠一郎氏が19年ぶり入閣」(2024年10月)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/357495