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【図解】サムスン電子が次世代メモリーHBM4Eを世界初出荷|味の素が握る急所

サムスン次世代メモリー覇権と味の素の驚異的な素材独占

サムスン電子の次世代メモリーとは、同社が2026年5月29日に世界で初めてサンプル出荷を開始した第7世代の広帯域メモリー「HBM4E」を指します。12層構造で最大16Gbps・帯域幅約4.0TB/sに達し、株価急騰とAnthropicとの戦略的提携を追い風に、AIメモリー市場の主導権争いが新たな局面に入りました。

この記事でわかること

  • 世界初のHBM4Eサンプル出荷: サムスンは第7世代メモリーを業界で初めて出荷し、HBM4の量産からわずか3か月で次世代へ駒を進めました。
  • 株価急騰と提携の二重好材料: 同時期にAnthropicの「戦略的インフラパートナー」指名が重なり、株価は一時6%超上昇、時価総額は約210兆円に達しました。
  • 日本の急所は味の素のABF: 主役は韓国・米国勢ですが、AI半導体の組み立てに不可欠な絶縁材ABFは味の素が世界シェアほぼ100%を握る、日本の数少ない急所です。
目次

サムスンが世界初出荷した次世代メモリー「HBM4E」とは何か

サムスン電子は2026年5月29日、AI向け半導体に使う広帯域メモリー(HBM=高速・大容量のデータをまとめてやり取りするメモリー)の第7世代「HBM4E」のサンプル出荷を、業界で初めて開始したと発表しました。同社は2026年2月に第6世代「HBM4」を世界で初めて量産・出荷しており、そこからわずか3か月で次世代品を他社に先駆けて供給した形です。

HBM4Eの12層構造は、ピンあたりの転送速度を安定14Gbps、最大16Gbpsまで引き上げ、1スタックあたりの帯域幅は最大約4.0TB/sに達します(最大16Gbps時の理論値)。容量は48GBで、HBM4と比べて省電力性能は約16%、放熱性能は約14%改善したとされています。大規模言語モデル(LLM)の学習や推論では、計算速度よりもメモリーの帯域幅がボトルネックになりがちなため、こうした性能向上はAIの処理効率に直結します。

HBM4とHBM4Eの主な違いを整理すると、次のとおりです。

項目HBM4(第6世代)HBM4E(第7世代)
主な節目2026年2月 世界初の量産・出荷2026年5月 世界初のサンプル出荷
ピンあたり速度約13Gbps安定14Gbps/最大16Gbps
帯域幅(1スタック)最大約3.3TB/s最大約4.0TB/s
省電力・放熱(基準)HBM4比 省電力16%・放熱14%改善

世代をまたいで12層構造を維持しつつ、速度と帯域幅を着実に伸ばしている点が読み取れます。この基礎性能の理解があると、株価がなぜ動いたのかも見えてきます。

Q. HBM4Eとは何ですか?

A. HBM4Eは、AIの学習・推論に使う高速・大容量の半導体メモリー「広帯域メモリー(HBM)」の第7世代です。サムスン電子が2026年5月29日に世界で初めてサンプル出荷を開始し、12層構造でピンあたり最大16Gbps、1スタックあたり最大約4.0TB/sの帯域幅を実現します。

株価急騰の理由|時価総額2000兆ウォン突破の背景

5月29日の韓国株式市場で、サムスン電子の株価は一時6%超急騰しました。聯合ニュースによると、午後2時53分時点で前営業日比6.01%高の31万7500ウォンを付け、普通株と優先株を合わせた時価総額は2021兆ウォン(約210兆円)に達しました。終値ベースでは前日比3.67%高の31万500ウォンで取引を終えています。

急騰の背景には、2つの好材料が同じタイミングで重なったことがあります。1つは前述のHBM4Eの世界初サンプル出荷、もう1つは米AI企業Anthropicによる「戦略的インフラパートナー」への指名です。AIメモリーの需要が供給を上回る逼迫局面が続くなか、市場は「HBM4世代に続きHBM4E世代でもサムスンが先頭を走る」という構図を素直に好感した形です(編集部分析)。

なお「2,000兆ウォン突破」という表現については注意が必要です。約1週間前には、労使の賃金交渉の暫定合意を受けてサムスングループ全体(上場系列会社の合算)の時価総額が2,000兆ウォンを突破したと報じられており、今回はサムスン電子1社(普通株+優先株)での突破にあたります。対象範囲が異なる2つの節目が短期間に重なっている点は押さえておきたいところです。

Q. サムスン電子の株価はなぜ急騰したのですか?

A. HBM4Eの世界初サンプル出荷と、米AI企業Anthropicによる「戦略的インフラパートナー」指名が重なったためです。5月29日は一時6%超上昇し、普通株と優先株を合わせた時価総額は2021兆ウォン(約210兆円)に達しました。

HBM市場の主導権争い|サムスン・SKハイニックス・マイクロン

HBM市場は、AIインフラ投資の拡大を背景に、半導体業界で最も戦略的な主戦場の一つになっています。米調査会社カウンターポイントの集計では、2025年第3四半期のHBM収益シェアはSKハイニックスが約57%で首位、サムスンが約22%、マイクロンが約21%でした。SKハイニックスはNVIDIA向けの主力供給者として長年の実績を持ち、次世代基盤「Vera Rubin」向けHBM4でも大きな配分を確保しています。

そのSKハイニックスを猛追しているのがサムスンです。HBM3E世代では歩留まりの課題を抱えていたとされますが、HBM4・HBM4Eを世界に先駆けて投入することで、技術的な先行をアピールしています。3社の立ち位置を整理すると、次のようになります。

項目サムスン電子SKハイニックスマイクロン
HBM収益シェア(25年Q3)約22%約57%約21%
次世代の動きHBM4・HBM4Eを世界初投入HBM4E量産は2027年目標HBM4E量産は2027年目標・TSMCと連携
強みメモリ・製造・パッケージ一括長年のNVIDIA主力供給米国拠点・JEDEC標準準拠

シェアではなお首位のSKハイニックスに分があるものの、次世代品の投入時期ではサムスンが一歩先んじている構図が見えてきます。こうした競争の激しさは、AI半導体そのものの需要の強さを映したものでもあります。

📌 AI半導体の需要がどれほど強いか知りたい方はこちら
→ エヌビディア決算速報(2026年Q1)

AI需要の強さは、エヌビディアの決算でも数字として表れています。詳しくは「エヌビディア決算速報(2026年Q1)|売上816億ドル・過去最高更新でQ2見通しも予想超え」で解説しています。

Q. HBMでサムスンとSKハイニックスはどちらが優勢ですか?

A. 米調査会社の集計では、2025年第3四半期のHBM収益シェアはSKハイニックスが約57%で首位、サムスンが約22%、マイクロンが約21%でした。ただしサムスンはHBM4とHBM4Eを他社に先駆けて投入しており、巻き返しの局面に入っています。

AMD「MI455X」への優先供給とターンキー戦略|サムスン唯一の強み

サムスンの強気の背景には、有力顧客との関係強化があります。2026年3月18日、サムスンはAMDとMOU(覚書)を締結し、AMDの次世代AIアクセラレータ「Instinct MI455X」へのHBM4優先供給で合意しました。MI455Xは12層のHBM4を12個積み、合計432GBという大容量メモリーを搭載する計画です。協業はメモリーにとどまらず、AMDの第6世代EPYC CPU(コードネーム「Venice」)向けの次世代DDR5や、ラック型AIプラットフォーム「Helios」にも及びます。

さらに見逃せないのが、MOUにファウンドリ(半導体の委託製造)提携の協議まで含まれている点です。サムスンは「最先端のメモリー」「最先端ファウンドリ」「先端パッケージング」をすべて自社で一括提供できる立場を強調しています。チップの製造からメモリーの3D実装までを1社で完結できる体制は、設計・製造・パッケージングを分業するTSMCやSKハイニックスにはない差別化要因です(編集部分析)。

この「ターンキー(一気通貫)」体制を図にすると、次のようになります。

サムスンだけが1社で完結できる「ターンキー」体制 ① HBM4Eメモリ ② 最先端ファウンドリ ③ 先端パッケージング 分業のTSMC・SKハイニックスにはない差別化要因

つまりサムスンは、強力なハードウェアへの優先供給権を確保しつつ、自社の全リソースを投下することで、次世代AI半導体市場の主導権奪還を狙っているといえます。この姿勢は、Anthropicとの提携にも表れています。

Q. AMDの「MI455X」とサムスンのHBM4はどう関係しますか?

A. 2026年3月18日、サムスンとAMDはMOU(覚書)を締結し、AMDの次世代AI半導体「Instinct MI455X」へのHBM4優先供給で合意しました。MI455Xは12層のHBM4を12個積み、合計432GBの大容量メモリーを搭載する計画です。

Anthropicとの戦略的提携|AIインフラ投資の最前線

今回の株価急騰のもう一つの引き金が、米AI企業Anthropicとの関係です。Anthropicは2026年5月に650億ドルの資金調達(シリーズH)を実施し、調達後の評価額は9650億ドルに達しました。この調達で、Anthropicはサムスン電子・SKハイニックス・マイクロンの3社を「戦略的インフラパートナー」に指名しています。

注目されるのは、Anthropicが発表でロジックチップ(演算用半導体)の供給に言及した点です。3社の中でファウンドリ事業を持つのはサムスンのみであることから、提携が単なるメモリー供給を超え、AIチップの受託製造へと広がる可能性が業界で指摘されています。韓国メディアの報道では、Anthropic経由でサムスンが獲得しうる受注規模が将来的に大きく拡大するとの見方も示されました。ただし現時点では確定契約ではなく、あくまで提携の枠組みと業界の見通しの段階である点には留意が必要です。

AI開発の競争は、もはやメモリー性能だけの勝負ではなく、チップの設計・製造・先端パッケージングまでを束ねる「エコシステムの奪い合い」へと移行しています(編集部分析)。サムスンの一連の動きは、その潮流のなかに位置づけられます。

Q. サムスンとAnthropicの提携とは何ですか?

A. 米AI企業Anthropicは2026年5月に650億ドルを調達して評価額9650億ドルに到達し、サムスン・SKハイニックス・マイクロンを「戦略的インフラパートナー」に指名しました。3社の中でファウンドリを持つのはサムスンのみで、AIチップの受託製造への発展も期待されています。

日本の急所「味の素ABF」|AI半導体を支える唯一無二の存在

ここまで見てきたとおり、AIメモリーの最前線に立つのは韓国・米国の企業であり、日本企業の名前はほとんど登場しません。日本はかつてDRAMで世界を制しながら、エルピーダの破綻を経て表舞台から退き、現在のHBM最前線でも存在感は限定的です。AIの心臓部であるメモリーを海外勢に依存する構造は、経済安全保障上の論点として残り続けています(編集部分析)。

しかし、この競争の足元を支える「素材」に目を向けると、日本が握る決定的な急所が見えてきます。それが、半導体パッケージ基板の層間絶縁材「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」です。ABFは味の素の子会社が手がける絶縁フィルムで、高性能なパソコンやサーバーのCPU向けで世界シェアはほぼ100%に達しています。NVIDIAに代表されるAI向けの超高機能半導体でもほぼ同等のシェアを握り、AI半導体は巨大なサイズと複雑な構造から、従来のPC用とは比較にならない量のABFを消費するとされています。

AI半導体の土台を支える味の素「ABF」 AI半導体チップ(GPU・HBM) 層間絶縁材 ABF パッケージ基板 =味の素が世界シェア ほぼ100%を握る日本の急所

味の素のABF事業は、2024年度で売上高765億円、営業利益402億円、営業利益率は約50%という高収益を記録しました。約25年にわたる独占的地位の源泉は、インテルなど主要メーカーに技術者を常駐させ、次世代チップの設計段階から仕様を最適化する「伴走型開発」にあるとされます。調味料の技術から生まれた素材が、バリューチェーンの急所(チョークポイント)を握り続けているのです。

日本人としては、ここに誇るべき足場があると言えます(編集部分析)。最先端のAI半導体がどれほど高性能になっても、その土台を組み立てる絶縁材は日本企業が握っている――。海外依存が語られがちなAI半導体の世界で、日本が手放してはならない技術的優位の一例として、ABFは記憶しておく価値があります。

日本の半導体メーカーの動向については、「キオクシア(285A)ストップ高の理由と今後の株価見通し【2026年5月】」もあわせてご覧ください。

Q. このAI半導体競争に日本企業はどう関わっていますか?

A. 韓国・米国勢が前面に立つ一方、半導体パッケージの層間絶縁材「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」は味の素が世界シェアほぼ100%を握ります。最先端のAI半導体の組み立てにも不可欠で、日本が握る数少ない急所のひとつです。

サムスン半導体の今後の見通しと日本への示唆

サムスンは、HBM4Eを顧客の量産日程に合わせて量産へ移行する計画です。HBM4とHBM4Eが同じ1c DRAMプロセスと基盤ダイ構造を共有しているため、量産技術をそのまま転用しやすい点が、迅速な世代交代を支えています。証券各社は強気の見通しを示しており、KB証券などはサムスン電子とSKハイニックスがいずれ時価総額「2兆ドルクラブ」に入るとの展望を提示しています。

日本にとっての示唆は2つあります(編集部分析)。1つは、AIメモリーの本体競争では海外勢への依存が当面続くという現実。もう1つは、ABFのような素材・材料の領域では、日本がなお代替の利かない強みを持つという事実です。AI需要の逼迫が続く限り、半導体サプライチェーン全体の戦略的重要性は高まり続けます。本体だけでなく、素材・装置・部材まで含めた「どこで日本が勝てるか」を見極める視点が、これからますます重要になります。

Q. サムスン半導体の今後の見通しは?

A. HBM4Eは顧客の量産日程に合わせて量産へ移行する計画です。証券各社はサムスンとSKハイニックスがいずれ「2兆ドルクラブ」入りするとの見方も示しており、AIメモリー需要の逼迫が続く限り、強気の見通しが優勢です。

参考情報

  • サムスン電子 公式ニュースルーム「Samsung Electronics Begins Shipment of Industry-First HBM4E Samples」(2026年5月29日):https://news.samsung.com/global/samsung-electronics-begins-shipment-of-industry-first-hbm4e-samples
  • サムスン半導体 公式「Samsung and AMD Expand Strategic Collaboration」(2026年3月18日):https://semiconductor.samsung.com/news-events/news/samsung-and-amd-expand-strategic-collaboration-on-next-generation-ai-memory-solutions/
  • 聯合ニュース(日本語版、2026年5月29日):https://jp.yna.co.kr/view/AJP20260529003000882
  • 味の素グループ ABF紹介ページ:https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/rd/our_innovation/abf/

この記事を書いた人:あいすべ(監修・編集統括)

健診・治験の現場で10年以上、臨床データの精査に従事。地方公務員として公立病院に勤務し、経営推進課の責任者を経てマーケターに転身。データ検証と実践哲学(葉隠)の両面から、情報のバイアスを見抜く視点で「大和帰郷」を運営しています。資格・経歴は実在し、求めに応じて証憑を提示できます。。

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