2026年5月24日、石川県珠洲市で任期満了に伴う市長選挙が投開票され、現職の泉谷満寿裕氏(62歳・無所属)が新人の浦秀一氏(63歳・無所属)を破り6選を果たしました。能登半島地震(2024年1月)と奥能登豪雨(2024年9月)という二重の災害に見舞われた珠洲市で、住民は市政継続を選択しました。ただし、その選択は「泉谷氏への積極的な支持」というより、「現状変更がもたらすリスクを回避するための消去法的な判断」だった側面が色濃く残ります。
この記事でわかること
- 選挙結果の詳細: 泉谷氏が4,270票・浦氏が2,243票で、投票率は71.53%(有権者9,198人)。公式確定数値を網羅しています。
- 争点の本質: 復興の「継続」か「刷新」かではなく、縮退が進む市をいかに「縮退管理」するかが問われた選挙でした。
- 6期目の最大課題: 地震前比17.8%超の人口減少という構造問題に、20年間市政を担ってきた泉谷氏がどう向き合うかが焦点です。
珠洲市長選2026の結果まとめ
2026年5月24日に執行された珠洲市長選挙(令和8年5月24日執行)の開票結果は以下のとおりです。
| 届出順 | 候補者名 | 党派 | 得票数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 泉谷 ますひろ(現職) | 無所属 | 4,270票 |
| 2 | うら 秀一(新人) | 無所属 | 2,243票 |
当日有権者数9,198人(男4,324人・女4,874人)に対し、投票者数は6,579人。投票率は71.53%(男72.62%・女70.56%)で、開票は午後8時15分に確定しました。有効投票6,513票のうち、泉谷氏が約65.6%を獲得し、浦氏を2,027票差で下しました(いずれも珠洲市選挙管理委員会の公式発表値)。
Q. 珠洲市長選2026の結果は?
A. 現職の泉谷満寿裕氏が6選を果たしました。得票数は泉谷氏4,270票・浦氏2,243票(投票率71.53%)で、いずれも珠洲市選挙管理委員会の公式確定値です。
選挙の争点|震災復興と人口減少対策
今回の市長選で最大の争点となったのは、能登半島地震・奥能登豪雨後の復旧復興のあり方と、地震後に一層加速した人口減少への対応でした。
以下のグラフが示すとおり、珠洲市の人口は地震前から急減しており、2026年1月時点で約10,332人と、2023年12月(約12,573人)から約17.8%の減少となっています(奥能登4市町で最大の減少率)。石川県が2026年4月に発表した推計では、珠洲市の人口減少率は地震後初めて20%を超えました。
この数字が示す現実は重い。復興公営住宅の整備・仮設住宅からの退去支援・産業再建といった「復旧」の課題と並行して、「縮小していく市をいかに持続可能な形で運営するか」という縮退管理の問題が、泉谷氏の6期目に正面から問われています。
Q. 珠洲市長選の主な争点は何でしたか?
A. 復興公営住宅の整備方針、仮設住宅からの退去対応、そして地震後に加速した人口減少への対策が主要な争点でした。地震前から進む構造的な過疎化を「縮退管理」としてどう扱うかが、6期目最大の課題とみられます。
泉谷満寿裕氏とはどんな人物か|5期20年の実績と6期目の課題
泉谷満寿裕氏は1963年生まれの62歳。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、野村證券勤務、家業(泉谷菓子舗)の代表を経て、珠洲生必株式会社代表取締役に就任。2006年の珠洲市長選挙で初当選し、今回の6選で通算の在任期間は24年に及びます。
5期20年の間、合併協議を経ずに単独市制を維持し、「日本の原風景」を前面に出した観光振興や揚げ浜式塩田の保護など、小さくても個性ある自治体経営を続けてきました。しかし、その間も人口は一貫して減少し続けており、地震・豪雨がその速度を劇的に加速させました。
6期目に泉谷氏が直面するのは、復興計画の着実な実行と並行した「縮退管理」という二重の課題です。人口1万人を割り込んだ市において、学校・病院・インフラをどこまで維持し、何を集約・廃止するかという判断は、政治的にも財政的にも困難を伴います。
Q. 泉谷満寿裕氏はなぜ6選できたのですか?
A. 能登半島地震・奥能登豪雨後の「復旧復興の継続」という訴えが有権者に受け入れられたとみられます。5期20年の実績が一定の評価を受けた結果ですが、一方で現状変更のリスクを回避する「消去法的な選択」という側面も否定できません。
浦秀一氏の主張と落選の背景
浦秀一氏は63歳。近畿大学理工学部卒業後、奥能登地区の中学校教諭として長年勤務し、2023年の珠洲市議会議員選挙で初当選した新人候補です。在任わずか1期で市長選に打って出た形となりました。
浦氏は市政の刷新を掲げましたが、2,243票という得票数は有効票全体の約34%にとどまりました。議員1期・教育現場出身という経歴は「刷新」の象徴にはなり得ても、「震災復興を任せられるか」という問いに対する有権者の不安を払拭するには至らなかったとみられます。
Q. 浦秀一氏はどんな人物ですか?
A. 元珠洲市議会議員(2023年初当選・1期)で63歳。奥能登で中学校教諭を務めた後に市政の刷新を掲げて出馬しましたが、現職の壁を越えられませんでした。約2,000票差は、刷新への期待が一定数存在することも示しています。
投票率71%超が示す被災地の民意
投票率71.53%という数値は、過疎・高齢化が進む珠洲市において注目に値します。人口が1万人を割り込み、有権者数も9,198人まで減少したなかで、実に6,579人が投票所へ足を運びました。
被災・避難という状況下での選挙にもかかわらず、前回同時刻比を上回るペースで推移した投票率は、住民が「誰が市を率いるか」に強い関心を持っていたことを示します。ただしこの数字を「高い政治的エネルギー」と読むのは一面的で、「それほど切実な問題として受け止めた結果」と解釈する方が実態に近いかもしれません。
Q. 珠洲市の人口は今どのくらいですか?
A. 石川県の推計によると、2026年4月1日時点で珠洲市の人口減少率は地震後初めて20%を超えました。2026年1月時点では約10,332人とみられており、地震前の2023年12月(約12,573人)から約17.8%減少しています。
能登半島地震後初の市長選が問うもの|(編集部分析)
今回の選挙結果を「復興への信任」と呼ぶのは、正確ではないかもしれません。
(編集部分析)泉谷氏の約65%得票は、確かに「支持」の数字です。しかしその実態を見ると、震災復興の途中で市政を別の人物に委ねることへの不安、そして「代替候補の実績・準備が現職に届かなかった」という現実が選択を規定したとみる方が妥当です。いわば「現状変更がもたらすリスクを回避するための、消去法的な継続」です。
より本質的な問いは、泉谷氏が6期目に何を達成できるか、ではなく、「縮退していく市を、いかに人間的な規模で維持するか」という問いではないでしょうか。人口が1万人を割り込んだ珠洲市では、復興計画の完遂それ自体が目標であると同時に、その完遂後に何が残るのかという設計図も同時に必要です。復興公営住宅を整備しても、そこに戻る人が増えなければ、施設だけが残ります。産業を再建しても、担い手がいなければ持続しません。
能登半島地震後初の市長選が突き付けた問いは、「誰が市長になるか」という問いを超えて、「この規模の自治体が、国から十分な支援を受けながら縮退管理を続けることを、日本社会が正面から認めるかどうか」という問いでもあります。珠洲市の選択は、同様の課題を抱える地方都市が今後参照すべき先行事例となるでしょう。
参考情報
- 珠洲市選挙管理委員会「珠洲市長選挙 投票結果・開票結果」https://www.city.suzu.lg.jp/soshiki/1/25071.html
- 北陸朝日放送「珠洲市長選」http://www.hab.co.jp/news/article/202605248129.php
- 読売新聞「珠洲市長選」https://www.yomiuri.co.jp/local/ishikawa/news/20260517-GYTNT00210/
- 北陸中日新聞「珠洲市人口減 20%超 県推計 能登半島地震以降」https://www.chunichi.co.jp/article/1245889
- 日本経済新聞「石川・珠洲市、人口初の1万人割れ 震災後の減少続く」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC015F00R00C25A9000000/

