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【図解】東京商工リサーチ最新調査|黒字でも潰れる会社の正体

東京商工リサーチ最新調査!黒字なのに倒産する理由とは

東京商工リサーチ(TSR)の最新調査とは、2025年度の「後継者難」倒産が過去最多461件、2026年1-5月のデイサービス倒産も上半期最多27件に達したとする企業動向データです。黒字でも経営者の高齢化と薄利構造で事業継続を断念する中小企業の実態と、「ぬい活」関連企業の好調という対照を、同時に映し出しています。本記事では、これらの数字が何を意味するのかを構造から読み解きます。

この記事でわかること

  • 黒字でも潰れる正体: 後継者難倒産は過去最多の461件。要因の8割超は経営者の死亡・体調不良で、財務ではなく「人」に依存した事業の脆さが背景にあります。
  • 介護現場のカツカツ構造: デイサービス倒産は上半期最多の27件。公定価格のためコスト増を料金へ転嫁できず、わずかな燃料代の揺らぎにも耐えられない事業者が淘汰されています。
  • 伸びる現場との差: 「ぬい活」関連34社は売上1.7倍・利益ほぼ2倍。明暗を分けるのは経営努力の量ではなく、価格と需要をめぐる環境の差です。
目次

東京商工リサーチが示した3つの数字|いま中小企業に何が起きているのか

東京商工リサーチが2026年に相次いで公表した調査は、日本の中小企業が置かれた状況を3つの数字で浮き彫りにしました。

1つ目は、2025年度(4-3月)の「後継者難」倒産が461件で、調査を開始した2013年度以降で過去最多を更新したことです。2つ目は、2026年1-5月のデイサービス事業者の倒産が27件と、上半期として過去最多ペースに達したことです。3つ目は、これらの暗い数字とは対照的に、「ぬい活」と呼ばれる趣味文化を背景にぬいぐるみ関連企業が好調を維持していることです。

縮む現場と伸びる現場が同じデータの中に並んでいる点に、いまの日本経済の縮図があります。まず押さえておきたいのは、倒産の増加が一時的な景気変動ではなく、構造的な傾向として定着しつつあるという事実です。

Q. 後継者難による倒産は本当に増えているのですか?

A. はい。東京商工リサーチによると2025年度の「後継者難」倒産は461件で、調査を開始した2013年度以降で過去最多を更新しました。5年連続で400件台と高止まりしており、一時的な現象ではなく構造的な傾向として定着しています。

この構造的な傾向の中身を、次章でさらに掘り下げます。

「赤字じゃないのに潰れる」のはなぜか|後継者難倒産の構造

「赤字でもないのに会社が潰れる」という現象は、財務の問題ではなく「人」の問題です。後継者難倒産の要因を分けると、代表者の「死亡」が219件で構成比47.5%、「体調不良」が172件と、この2つの要因だけで全体の84.8%を占めています。つまり、事業の継続が経営者個人の身体に完全に依存している状態であり、本人に不測の事態が起きれば、黒字であっても即座に廃業や破産による清算へ直結するのです。

倒産した企業の資本金は1千万円未満が6割を超え、形態別では破産が94.7%に達します。これは再生(立て直し)ではなく、事業そのものの完全な消滅を意味します。技術、取引先との関係、雇用が一度に失われ、地域経済の供給網が静かに痩せていきます。

次の図は、なぜ黒字の会社が清算へと進んでしまうのか、その典型的な流れを示したものです。

経営者の高齢化 (黒字でも継続) 死亡・体調不良 (要因の84.8%) 後継者が不在 (承継できず) 廃業・清算 (破産94.7%) 黒字でも「人」の問題で清算に至る後継者難倒産の流れ

図が示すとおり、出発点にあるのは経営者の高齢化であり、後継者の不在がそれを「廃業・清算」へと一直線に結びつけています。

(編集部分析)現場の実感としては、「後継者難の会社をM&Aで引き受けたい」とアンテナを張っていても、承継案件そのものがなかなか市場に出てこないという声があります。背景には、たとえ黒字であっても、その黒字が経営者の長時間労働によってかろうじて支えられている薄利の事業が多いという事情があります。社長が身を粉にして働いて、ようやく黒字を確保している。第三者から見れば、引き継いだところで同じだけ働かなければ利益が残らず、承継する「うまみ」が乏しいのです。さらに、その薄い利益を税負担が削り取っていくため、買い手にとっての魅力は一段と下がります。後継者難倒産の本質は、後継者がいないことそのものよりも、承継したくなるだけの収益性を事業が持てていない点にあると考えられます。この収益構造は、家計の手取りを左右する税制とも地続きの問題です。食料品の消費税減税をめぐる議論の全体像は「食料品の消費税減税はいつから?1%案と2027年4月施行の全工程」で詳しく解説しています。

Q. 赤字ではないのに会社が潰れるのはなぜですか?

A. 後継者の不在が主因です。後継者難倒産では経営者の「死亡」と「体調不良」が要因の84.8%を占め、事業継続が経営者個人に依存しています。黒字でも引き継ぐ人がいなければ、廃業や破産による清算を選ばざるを得ません。

Q. なぜ後継者や買い手が見つからないのですか?

A. 経営者が長時間労働でようやく利益を出している薄利の事業が多く、第三者から見て承継する魅力(収益性)が乏しいケースが少なくないためという見方があります。税負担も手元に残る利益を圧迫し、買い手にとっての旨味を削ぐ一因と指摘されています。

同じ「コストに弱い」という弱点は、介護の現場でより鮮明に表れています。

デイサービス倒産が過去最多ペースの理由|介護現場のカツカツ構造

地域の高齢者を支えるデイサービス事業者の倒産が急増しています。2026年1-5月の倒産は27件で、前年同期の16件から68.7%増加し、2000年以降の上半期として過去最多だった25件を、1か月を残して早くも上回りました。

倒産の原因別では、売上不振が18件、赤字の累積が5件と、業績不振が8割を超えます。さらに、倒産した27件のうち従業員10人未満の事業所が25件と9割を超えており、小規模・零細の事業者が息切れしている実態がわかります。引き金となったのは、光熱費の高騰、利用者送迎にかかる燃料代の上昇、そして慢性的な人手不足です。食事の調理や入浴の介助といった、エネルギーと人手を多く使うサービスの性質が、コスト増の影響をそのまま受けやすくしています。

(編集部分析)注目すべきは、これが「エネルギー価格が高いから潰れた」という単純な話にとどまらない点です。介護報酬という公定価格のもとで運営されるデイサービスは、コストが上がっても、その分を自由に利用料へ転嫁することができません。だからこそ、わずかなコストの揺らぎ、いわば「そよ風」程度の燃料代の変動にさえ耐えられないビジネスモデルになっている。問題の核心はエネルギー価格そのものより、価格決定の自由を持たない事業構造の側にあると考えられます。利益の余白がないため賃上げの原資も生まれず、人件費を上げられないことが人手不足をさらに悪化させる悪循環に陥っています。

📌 光熱費・燃料代の高騰が経営を直撃する構造をもっと知りたい方はこちら
→ 再エネ賦課金が20兆円を超えた理由

このコスト環境を踏まえると、今後の倒産がどう推移するのかが気になるところです。

Q. デイサービスの倒産が増えているのはなぜですか?

A. 光熱費や送迎の燃料代の高騰、人手不足が重なったためです。介護報酬という公定価格のもとで運営され、コスト上昇分を自由に料金へ転嫁できないため、利益の薄い小規模事業者ほど経営体力を奪われやすい構造があります。

Q. デイサービスの倒産は今後さらに増えますか?

A. 東京商工リサーチの担当者は、2026年の年間件数が過去最多だった2022年の69件を上回る可能性に言及しています。ただしこれは見通しであり確定した数字ではありません。コスト環境次第で変動する点に注意が必要です。

一方で、同じ物価高のなかでも好調を保つ分野があります。その違いに、構造的なヒントが隠れています。

縮む現場と伸びる現場|「ぬい活」特需が映す“うまみ”の差

倒産の話題が続くなかで、東京商工リサーチは対照的な好調事例も示しています。お気に入りのぬいぐるみを持ち歩き、一緒に出かけたり着飾ったりする「ぬい活」と呼ばれる文化の広がりです。

ぬいぐるみ関連34社の2025年(1-12月)の売上高は849億円で、5年前の2021年から約1.7倍に伸び、最終利益は54億円とほぼ2倍に増えました。若い世代から大人まで巻き込み、ぬいぐるみのクリーニングや修繕といった周辺サービスまで生まれています。次の表は、苦境のデイサービスと好調なぬい活関連企業を、構造の違いという観点で並べたものです。

比較項目デイサービス事業者ぬい活関連企業(34社)
価格決定の自由低い(介護報酬=公定価格でコスト増を転嫁しにくい)高い(需要に応じて価格・付加価値を設定できる)
需要動向事業所数は緩やかに減少、競争激化で淘汰趣味文化の拡大で世代を超えて伸長
直近の利益業績不振が倒産原因の8割超最終利益54億円(2021年比ほぼ2倍)

表が示すのは、明暗を分けたのが経営努力の量ではないということです。

(編集部分析)デイサービスの経営者が努力を怠っているわけではありません。むしろ、公定価格という制約のなかで賃金も上げられず、限界まで踏ん張っているのが実態です。両者を分けているのは、価格を自分で決められるかどうか、そして需要が伸びる市場にいるかどうかという「環境」の差です。同じ物価高という風が吹いても、価格決定の自由と拡大する需要という二枚の帆を持つ事業は前へ進み、それを持たない事業は同じ風で沈んでいきます。日本企業の体力を論じるとき、努力論ではなく、どの事業がどんな環境に置かれているかという構造の視点が欠かせません。

Q. 「ぬい活」で関連企業は本当に好調なのですか?

A. はい。東京商工リサーチによると、ぬいぐるみ関連34社の2025年売上高は849億円で2021年の約1.7倍、最終利益は54億円とほぼ2倍に伸びました。需要拡大と価格決定の自由度が、好調の背景にあるとみられます。

では、こうした構造を踏まえたうえで、中小企業の倒産は今後どこへ向かうのでしょうか。

中小企業の倒産は今後どうなるか|事業承継と税・コストの重い宿題

今後の見通しとして、東京商工リサーチの担当者は、デイサービス倒産について年間件数が過去最多だった2022年の69件を上回る可能性に言及しています。ただし、これはあくまで現時点の見通しであり、確定した数字ではありません。燃料費や物価の動向次第で変動する点には留意が必要です。

後継者難倒産についても、5年連続で400件台という高止まりが続いており、経営者の高齢化という人口構造に根ざした要因である以上、短期間で大きく改善する材料は見当たりません。M&Aや第三者承継、廃業支援といった選択肢はあるものの、薄利で税負担が重い事業には買い手がつきにくく、制度の整備だけでは解決しにくい構造的な課題が残ります。

(編集部分析)後継者難とデイサービス倒産は、別々の現象に見えて、根は同じところでつながっています。それは、利益の余白がない事業ほど、わずかな環境変化で立ち行かなくなるという脆さです。承継案件が市場に出てこないのも、介護事業者が燃料代の揺らぎで倒れるのも、突き詰めれば「薄利」が原因です。事業を続ける人が報われるだけの収益が残る環境、すなわち税やコスト、価格制度のあり方を見直さなければ、いくら承継支援の窓口を増やしても、引き継ぎたくなる事業そのものが市場に現れません。個別企業の破産がどのような経緯をたどるのかは「豊竺建設(串尾総建)が破産した理由と負債総額」で、中小企業の資金繰りを左右する金利環境については「日銀利上げの理由と生活への影響」で、それぞれ詳しく解説しています。

Q. 中小企業の事業承継に解決策はありますか?

A. M&Aや第三者承継、廃業支援などが選択肢です。ただし薄利で税負担が重い事業は買い手がつきにくく、制度だけでは解決しにくい構造的課題が残ります。早期に金融機関や支援機関へ相談する体制づくりが重要とされています。

数字の背後にある構造を読み解けば、これらが単発のニュースではなく、日本の中小企業が共通して抱える宿題であることが見えてきます。

参考情報

  • 東京商工リサーチ「2025年度の『後継者難』倒産 過去最多の461件」TSRデータインサイト(2026年4月8日)
  • 東京商工リサーチ「1-5月の『デイサービス』倒産27件、上半期最多を更新」TSRデータインサイト(2026年6月12日)
  • 東京商工リサーチ「『ぬい活』業界が好調 利益は4年前から倍増」(2026年6月、Yahoo!ニュース・日本経済新聞報道)

運営主体:ヤマト帰郷 運営事務局

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  • データ解析: 臨床検査技師のバックグラウンドを持ち、 1ミリの誤差も許さない精密なデータ分析を10年以上経験した スペシャリストが解析を主導。
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  • 独自の視点: 官公庁の一次資料(PDF等)をベースに、 既存メディアが見落としがちな「異常値」を特定し、 中立的かつ国益に資する視点で情報を翻訳します。
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