2026年7月6日午後1時1分、中国海軍の原子力潜水艦が太平洋の公海へ向け、模擬弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射しました。落下を想定した区域の一部に、和歌山県・潮岬南方の日本のEEZ(排他的経済水域)が含まれていたことから、国内では大きな懸念が広がっています。中国が弾道ミサイルの発射を対外的に公表すること自体が極めて異例で、日本政府はすでに深刻な懸念を中国側に伝達しました。
この記事でわかること
- 発射の経緯とタイムライン: 事前通知から発射、着弾、注意喚起解除までの流れ
- 「EEZに着弾」の実態: 政府見解に基づく、着弾地点とEEZの正確な関係
- 中国の思惑と今後: なぜこのタイミングで発射したのか、日本が取るべき対応
結論:中国原潜がSLBM発射、EEZ着弾は本当か
中国国防部は2026年7月6日午前11時30分ごろ、日本政府に対し弾道ミサイルを発射する旨を通知しました。同日午後1時1分、中国軍は原子力潜水艦から太平洋の公海へ向けてSLBMを発射し、目標海域に着弾しました。中国がSLBMの発射を公表するのは極めて異例です。
木原官房長官は「わが国および地域の安全保障の観点から懸念を有している」としたうえで、「わが国の領域や排他的経済水域(EEZ)の上空通過は確認されていない」と説明しました。日本関連の航空機・船舶の被害情報にも接していないとしています。海上保安庁は同日午後5時、周辺の船舶や航空機への注意喚起を解除しました。
一部報道では「日本のEEZに着弾した」かのように受け取られていますが、これは正確ではありません。実際には、落下を想定した広い区域の一部にEEZが含まれていただけで、着弾地点自体はEEZの外だったというのが日本政府の見解です。この点は次のセクションで詳しく整理します。
発射までの経緯とタイムライン
今回の発射は、事前通知から着弾、注意喚起解除まで、わずか半日足らずの間に進みました。まず流れを時系列で押さえておきます。
7月6日午前11時30分ごろ、中国国防部が日本大使館に対し弾道ミサイルの発射を通知しました。同日午後1時1分、中国軍が原子力潜水艦から太平洋の公海へ向けてSLBMを発射し、目標海域に着弾しました。日本政府はこれを受けて中国側に深刻な懸念を伝達し、日本の安全を脅かさないよう再考を強く求めました。同日午後5時、海上保安庁が周辺への注意喚起を解除しています。
一連の流れを見ると、通知から発射、そして注意喚起解除までが極めて短時間で完結していることがわかります。この「予告区域」と「実際の着弾地点」の関係を、次に整理します。
「中国が日本のEEZにミサイルを撃ち込んだ」という受け止め方をされがちですが、実態は異なります。中国が事前に示したのは、あくまで「この範囲に落下する可能性がある」という広めの想定区域であり、その中にたまたま和歌山県・潮岬南方や奄美群島東側の日本のEEZの一部が含まれていました。しかし、実際にミサイルが着弾した地点は、日本政府の見解ではそのEEZの外です。
| 項目 | 想定区域(予告内容) | 着弾地点(政府見解) |
|---|---|---|
| 対象海域 | 太平洋(潮岬南方・奄美群島東側の日本のEEZの一部を含む広い範囲) | 太平洋の公海(日本のEEZの域外) |
| 日本の上空通過 | - | 確認されていない |
| 被害情報 | - | 日本関連の航空機・船舶被害は確認されていない |
つまり「日本の海域に向けて撃たれた」というより、「もし外れれば日本のEEZに入り得る範囲を、平然と警戒区域に設定してきた」というのが正確な実態です。この”平然と設定してくること自体の異例さ”こそが、今回の本質的な問題だといえます。
日本への影響と防衛体制への波及
短期的には、防衛省による警戒監視の継続と、国会や報道での中国の軍事動向をめぐる論戦の活発化が見込まれます。日本政府はすでに「深刻な懸念」を中国側に伝達しており、外交ルートでのやり取りが続く可能性が高いといえます。米国、台湾、韓国など周辺国の反応や、日中の防衛当局間ホットラインの運用状況にも関心が集まっています。
中長期的には、南西諸島の防衛体制や反撃能力の整備など、日本の防衛力強化をめぐる議論が加速するとみられます。日米同盟の抑止力強化や、国民の安全保障に対する意識の高まりにもつながる可能性があります(編集部分析:政権が保守色を強めても中国側の軍事的圧力のかけ方自体は変わらないという事実は、日本の抑止力そのものが問われている証左だと捉えるべきです)。
専門家見解とSNSの反応
テレビ朝日・冨坂範明北京特派員は「来年の人民解放軍成立100年に向け、計画通りに着々と軍事力の強化をアピールする国内向けの狙いがある。実証実験の可能性が高い」と分析しています。同・佐々木一真政治部記者は、日本政府内で「潜水艦から発射した戦略ミサイルと、潮岬南方への落下を通告してきた弾道ミサイルは同一」との見方が強まっていると指摘しました。
X(旧Twitter)上ではNHKニュースの投稿が最も拡散し、インプレッション3,530件を記録しました。一般ユーザーの投稿でも「日本政府、中国の軍事動向を注視」「日本の安全脅かさないよう再考を」といった政府対応への言及が目立ち、世論の温度感は中程度で、パニック的な反応よりも政府の対応ぶりを注視する論調が中心でした。
なぜ今なのか:中国の思惑と対日圧力の構造
今回の発射の背景には、複数の思惑が絡み合っているとみられます。2025年11月以降くすぶり続ける、高市早苗首相の台湾有事関連発言や武器輸出原則解禁などの防衛政策転換への中国側の反発、2027年に迎える人民解放軍創設100年に向けた習近平政権の軍事力誇示、そしてトランプ米政権への牽制という3つの要素です。
(編集部分析:ここで見過ごせないのは、北朝鮮の挑発と今回の中国の行動が本質的に異なるという点です。北朝鮮のミサイル発射は体制維持や注目喚起の意味合いが強い一方、中国は今回、正式な外交ルートで日本政府に事前通知したうえで、対外的にも発射を公表しました。つまり偶発ではなく、計算された国家としての意思表示です。しかも対中強硬色の強い高市政権に対してもこれを実行してきたということは、「政権が変わっても中国の軍事的な圧力のかけ方は変わらない」という構造的な問題を示しています。一過性の出来事ではなく、繰り返されるパターンとして受け止める必要があります。)
中国が弾道ミサイル発射を公表すること自体が異例な中、2024年9月には中国ロケット軍がICBMを太平洋へ公開実射した前例があります。今回の発射とあわせて比較すると、対外公表という中国側の姿勢の変化が見えてきます。
| 項目 | 2024年9月:ICBM公開実射 | 2026年7月:SLBM発射(今回) |
|---|---|---|
| 発射主体 | 中国人民解放軍ロケット軍 | 中国海軍・原子力潜水艦 |
| 対外公表 | 実施(太平洋へのICBM発射公表は1980年以来44年ぶり) | 実施(極めて異例) |
| 着弾海域と日本の関係 | - | 落下想定区域の一部に日本のEEZを含むが、着弾はEEZ域外 |
こうして並べると、中国が近年、弾道ミサイル発射の”公開”自体を対外的なメッセージとして積極的に使い始めていることがわかります。習近平政権の内部事情と軍事動向の関係については「習近平に何が起きているか」で詳しく解説しています。また、習近平氏自身が「対中包囲網」への強い警戒感を語ってきた経緯も、今回の軍事的アピールと無関係ではないとみられます。詳しくは「習近平が語った『対中包囲網』の脅威」で解説しています。
なお、発射されたミサイルの種類について日本政府は公式に特定していませんが、中国共産党系メディアの環球時報は、新型の「巨浪(JL)3」(射程1万km超)だった可能性が高いとの軍事専門家の分析を伝えています。※環球時報は中国当局系の情報源であるため、この分析はあくまで参考情報として捉える必要があります。
📌 習近平体制の内部事情をもっと詳しく知りたい方はこちら
→ 習近平に何が起きているか
今後の展望・日本が取るべき対応
今回の発射を受け、日本政府は警戒監視の継続と、外交ルートを通じた中国側への再考要求を続けていく方針です。中国の軍事活動の透明性不足は、木原官房長官も「わが国と国際社会の深刻な懸念事項」と明言しており、防衛力整備や日米同盟の抑止力強化に向けた議論が今後さらに活発化するとみられます。
外交面では、高市政権がG7各国との連携を強めてきた経緯も踏まえておく必要があります。対中圧力に対抗するための重要鉱物分野での協力など、同盟国・友好国との連携強化の動きは「高市首相G7とイギリス・イタリアの狙い」で詳しく解説しています。
📌 高市政権の対中・対G7外交をもっと詳しく知りたい方はこちら
→ 高市G7とイギリス・イタリアの狙い
中国のミサイル発射に関するよくある質問
今回の一件について、読者からよく寄せられる疑問をまとめました。
Q. 中国のミサイルは日本に着弾したのですか?
A. 日本政府の見解では、実際の着弾地点は日本のEEZの域外です。落下を想定した区域の設定に日本のEEZの一部が含まれていただけで、着弾自体はEEZの外でした。
Q. なぜJアラートが鳴らなかったのですか?
A. 日本の領域やEEZの上空通過が確認されておらず、着弾地点もEEZの外だったためです。防衛省は日本上空の通過は確認されていないとしています。
Q. 発射されたのはどんなミサイルですか?
A. 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられます。日本政府は機種を特定していませんが、中国共産党系メディア・環球時報は新型「巨浪(JL)3」(射程1万km超)の可能性を報じています(※確認中)。
Q. なぜこのタイミングで発射したのですか?
A. 高市政権の防衛政策転換への反発、2027年の人民解放軍創設100年に向けた軍事力アピール、対米(トランプ政権)牽制など、複合的な狙いがあるとみられています。
Q. 日本政府はどう対応しましたか?
A. 木原官房長官が中国側に深刻な懸念を伝達し、日本の安全を脅かさないよう再考を強く求めました。防衛省は警戒監視に万全を期すとしています。
Q. 中国がSLBM発射を公表するのは珍しいことですか?
A. 中国が弾道ミサイル発射を対外的に公表すること自体が極めて異例です。2024年9月にはICBMの太平洋公開実射がありましたが、SLBM単体の公表頻度を示す確定的な記録は確認できていません(※確認中)。

