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令和8年度最低賃金、審議入りと倒産急増の裏側

最低賃金の引き上げが引き起こす10425件の倒産の裏側

「令和8年度最低賃金」とは、2026年度に適用される都道府県別の最低賃金額改定を指します。中央最低賃金審議会が7月に引き上げの目安を審議する一方、企業倒産が高水準で推移するなか、賃上げ体力の乏しい中小企業の淘汰が加速しかねないと懸念されています。

この記事でわかること審議の現状: 中央最低賃金審議会の小委員会が7月10日に第2回会合を開き、令和8年度の引き上げ目安を審議しています。 – 倒産との関係: 全国企業倒産は2年連続で1万件を超え、人件費を要因とする倒産が過去最多を更新しています。 – 本質的な論点: 賃金水準そのものより、中小企業が倒産して雇用の場自体が失われることの方が深刻だという見方があります。

目次

令和8年度最低賃金審議、何が起きているか

厚生労働省の中央最低賃金審議会「目安に関する小委員会」で、令和8年度(2026年度)の地域別最低賃金額改定に向けた審議が始まっています。第1回は2026年6月26日に、第2回は7月10日にビジョンセンター東京虎ノ門で開催され、いずれも「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」を議題としています。

例年のパターンでは、小委員会が7月中に複数回開催されたのち、中央最低賃金審議会が引き上げの「目安」を答申します。過去の答申日を見ると、令和6年度は7月24日でしたが、令和7年度は8月4日にずれ込んでおり、年度によって幅があります。令和8年度の答申日程は本稿執筆時点(2026年7月8日)で厚生労働省から公表されておらず、7月下旬から8月上旬にかけてになるとみられます(※確認中)。

答申された目安を踏まえ、各都道府県の地方最低賃金審議会が実際の改定額を決定し、例年10月前後から順次適用されます。

賃上げの圧力と、前年度が残した「教訓」

最低賃金の引き上げが続く背景には、労働者側の切実な事情があります。物価高が続くなか、賃金の伸びが物価上昇に追いつかなければ、実質的な生活水準は目減りしてしまいます。加えて、都道府県間の格差も是正すべき課題として意識されています。令和7年度の実績では、最高額(東京都1,226円)と最低額(1,023円)の差はなお200円以上あり、地方から都市部への人材流出を防ぐ観点からも、地方の底上げを求める声があります。

政府はこうした事情を踏まえ、「2020年代中に全国平均1,500円以上」を目標に掲げています。前年度(令和7年度)の実績を振り返ると、中央最低賃金審議会が示した目安(答申)は全国加重平均63円(Aランク63円・Bランク63円・Cランク64円)でしたが、地方審議会がこれに上乗せした最終的な改定結果は加重平均66円増・全国加重平均1,121円となり、39道府県で目安を超える引き上げが行われました。

一方で、この急激な引き上げは副作用も残しました。都道府県ごとの発効日が2025年10月1日から2026年3月31日まで、最大半年近くばらついたのです。急激な引き上げに対応しきれない企業に配慮し、施行までの猶予期間を都道府県ごとに調整した結果とみられますが、地域間で適用時期が異なる異例の事態となり、令和8年度の審議でもこの是正が論点の一つとなっています。

数字が示す限界―急増する「人件費倒産」の実態

4年連続増加、2年連続1万件超えという現実

帝国データバンクの集計によると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の全国企業倒産件数は1万425件となり、前年度(1万70件)から3.5%増加しました。4年連続で前年度を上回り、2年連続で1万件を超えています。負債総額は1兆5537億8100万円(前年度比31.0%減)で、負債5000万円未満の小規模倒産が目立つのが特徴です。

この数年の推移を見ると、倒産件数は右肩上がりで増え続けていることがわかります。

全国企業倒産件数の推移(年度ベース) 8,881件 10,070件 10,425件 2023年度 2024年度 2025年度

このように、賃上げが本格化した時期と重なる形で倒産件数は増加を続けており、両者の関係は無視できない規模になっています(編集部分析)。倒産が既に高水準にあるなかで最低賃金だけを引き上げれば、体力の乏しい中小企業がさらに追い込まれ、倒産件数の一段の増加につながりかねません。

過去最多を更新した「物価高・人件費」要因

2025年度は「物価高倒産」(963件)・「人手不足倒産」(441件)がいずれも過去最多を更新しました。2026年上半期(1〜6月)に絞ると、「物価高倒産」は556件発生し、前年同期(449件)から23.8%増加、2018年の集計開始以来最多となっています。要因別では「原材料」(255件)が最多ですが、次いで多いのが「人件費」(145件、前年同期比29.5%増)で、こちらも過去最多です。帝国データバンクは、人件費由来の倒産が2024年から急増し、エネルギー要因(106件)を上回ったと分析したうえで、「最低賃金の引き上げによる増加のほか、中小企業でも人件費増加分を価格転嫁できず、事業継続を断念したケースがある」と指摘しています。

実際に、経営体力の乏しい中小企業が倒産に至った事例は本サイトでも取り上げてきました。「グーニーズワン倒産|被害総額と返金の行方」で報じたような突然の経営破綻は、業種を問わず中小企業を取り巻く経営環境の厳しさを映し出しています。

専門家見解とX世論―「仕事場消失」への懸念

労働政策研究・研修機構の山田久氏は、経済政策的な狙いから高めの引き上げが続いてきた結果、中小企業側の反発が強まっている決定メカニズムの課題を指摘しています。新潟大学の長谷川雪子氏も、前年度の改定は地域間格差の縮小を明確に意図したものだった一方、発効時期のばらつきという従来にない事態を招いたと分析しています。

X上では、岡山県医労連や連合熊本といった労働組合が令和8年度審議入りを速報し、ユーコープ労働組合の投稿は前年度の改定遅れによる実質的な格差拡大に中央審議会自体が苦言を呈したことを伝え、240件のインプレッションを集めました。一方、豊川市議会議員の倉橋英樹氏は、引き上げ後の財政支援終了に伴う中小零細企業の倒産リスクとインフレ圧力を懸念し、地方格差の是正には賃金補助ではなく生産性向上や企業誘致が必要だと訴えています。

こうした声を踏まえると、最低賃金の数字そのものより、中小企業が倒産して雇用の場自体が失われることの方が本質的な問題だという見方ができます(編集部分析)。時給の額面がいくら上がっても、働く場所そのものが失われてしまえば、労働者にとっての恩恵は成り立ちません。最低賃金政策の是非は「いくら上げるか」だけでなく、「雇用の場をどう維持するか」という観点からも評価する必要があります。

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今後の展望―1,500円目標と雇用の維持、どう着地するか

政府が掲げる「2020年代中に全国平均1,500円以上」の目標を踏まえると、今後数年も高水準の引き上げが続く可能性は高いといえます。しかし、企業倒産が過去最多水準で推移するなか、引き上げ幅と中小企業の支払能力のバランスをどう取るかが、令和8年度審議の最大の論点になります。

令和7年度に顕在化した発効日のばらつきについても、令和8年度の審議でどこまで是正が議論されるかが注目されます。急激な引き上げに耐えられない企業への配慮と、地域間格差の是正という2つの目的を両立させる制度設計が求められています。

最低賃金を引き上げること自体は、生計費の防衛や地域間格差の是正という観点から意味のある政策です。ただし、その引き上げによって中小企業の倒産が加速し、結果として雇用の場そのものが失われてしまえば、政策の目的と結果が逆転しかねません。今後の審議は、単に「いくら上げるか」ではなく、「雇用の場をどう守りながら引き上げるか」という視点で注視する必要があります。

令和8年度最低賃金のよくある質問

Q. 令和8年度の最低賃金はいつから適用されますか?

A. 中央最低賃金審議会が7月に目安を審議した後、都道府県ごとの地方審議会で実額が決まり、例年10月前後から順次適用されます。ただし前年度は発効日が都道府県ごとに最大半年近くばらつきました。

Q. 最低賃金1,500円はいつ実現するのですか?

A. 政府は「2020年代中に全国平均1,500円以上」を目標に掲げています。前年度は最終的な加重平均が1,121円まで到達しており、今後も高水準の引き上げが続く可能性があります。

Q. 最低賃金を上げれば労働者の生活は本当に良くなるのですか?

A. 賃金水準そのものより、引き上げに耐えられない中小企業が倒産し、雇用の場自体が失われることを懸念する声があります。生産性向上や企業誘致による雇用維持の必要性も指摘されています。

参考情報

この記事を書いた人:あいすべ(監修・編集統括)

健診・治験の現場で10年以上、臨床データの精査に従事。地方公務員として公立病院に勤務し、経営推進課の責任者を経てマーケターに転身。データ検証と実践哲学(葉隠)の両面から、情報のバイアスを見抜く視点で「大和帰郷」を運営しています。資格・経歴は実在し、求めに応じて証憑を提示できます。。

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