2026年6月21日に投開票された茨城県石岡市長選は、元県議で新人の戸井田和之(といた・かずゆき)氏が、2度の不信任決議で失職した前市長・谷島洋司(やじま・ようじ)氏を262票差で破り、初当選しました。総事業費77億8千万円の複合文化施設計画の是非が最大の争点となった出直し選挙です。本記事では、開票結果から失職に至った経緯、新市長の公約、争点となった施設のお金の流れまでを整理します。
この記事でわかること
- 選挙結果: 戸井田和之氏が10,695票で初当選し、前市長の谷島洋司氏を262票差で破りました。
- 失職の理由: 谷島前市長は複合文化施設を巡って議会と対立し、2度の不信任決議で自動失職しました。
- 最大の争点: 77億8千万円の複合文化施設計画の是非。新市長は計画の「白紙撤回」を掲げています。
石岡市長選2026の結果|262票差で戸井田和之氏が初当選
前市長の失職に伴う茨城県石岡市長選は、2026年6月21日に投開票され、無所属新人で元県議の戸井田和之氏(61)が初当選しました。3選を目指した前職の谷島洋司氏(63)、新人で医療法人理事長の幕内幹男(まくうち・みきお)氏(68)を抑えての勝利です。
選挙管理委員会の最終結果によると、得票数は戸井田氏が10,695票、谷島氏が10,433票、幕内氏が8,801票でした。戸井田氏と谷島氏の差はわずか262票で、最後まで競り合う展開だったことがうかがえます。3候補の得票数を以下の図で示します。
当日有権者数は5万8318人、投票率は51.86%で、前回(2024年)の43.30%を大きく上回りました。出直し選挙という異例の事態に、市民の関心が高まったことが投票率の上昇に表れています。当選の一報を受けた戸井田氏は「みんなで石岡市を立て直そうという気持ちが伝わった。子どもたちが希望を持てるまちづくりを進めたい」と抱負を語りました。一方の谷島氏は「大きな支援をいただいたが、訴えが届かず残念。私の力不足で申し訳ない」と敗戦の弁を述べています。
Q. 石岡市長選2026の結果は?
A. 元県議で新人の戸井田和之氏が10,695票を獲得して初当選しました。前市長の谷島洋司氏(10,433票)を262票差で破り、医療法人理事長の幕内幹男氏は8,801票でした。投票率は51.86%で、前回の43.30%を上回りました。
僅差の決着となった今回の選挙は、そもそもなぜ「出直し」という形で行われたのでしょうか。その背景には、前市長と市議会の長期にわたる対立がありました。
谷島洋司氏はなぜ失職したのか|2度の不信任決議の全経緯
谷島前市長は、複合文化施設の整備計画などを巡って市議会と激しく対立していました。市議会は2026年3月19日、谷島氏に対する1度目の不信任決議を可決します。これに対し谷島氏は、対抗手段として市議会を解散しました。
しかし、4月26日に行われた出直しの市議選を経た新しい議会でも対立は解消されず、5月14日の市議会で2度目の不信任決議が可決されました。地方自治法の規定により、谷島氏はこの時点で自動的に失職します。一連の流れを時系列で整理すると、次のようになります。
茨城県内の首長が、不信任決議の再可決によって失職するのは、1974年の旧岩井市以来52年ぶりとされ、極めて異例の事態でした。市長不在の状態は約1カ月にわたって続き、市政の停滞が深刻な課題として浮かび上がりました。今回の出直し市長選は、こうした混乱を収拾し、市政をどう立て直すかを市民に問うものとなったのです。
Q. 谷島洋司前市長はなぜ失職したのですか?
A. 複合文化施設計画などを巡って市議会と対立し、2026年3月19日に1度目の不信任決議を受けました。谷島氏は議会を解散しましたが、4月の市議選を経た5月14日に2度目の不信任が可決され、地方自治法の規定により自動失職しました。
Q. 不信任決議が2度可決されると市長はどうなりますか?
A. 地方自治法では、1度目の不信任で市長は議会を解散できますが、解散後に選ばれた新議会で再び不信任が可決されると、市長は自動的に失職します。今回の谷島氏はこの規定に該当し、出直し選挙が行われました。
では、混乱を収拾する役割を託された新市長・戸井田氏とは、どのような人物なのでしょうか。
新市長・戸井田和之氏の経歴と公約
戸井田和之氏は61歳の無所属新人で、長く茨城県議を務めた地元政治家です。県議会議員に5回当選し、県議会副議長も経験しました。それ以前には石岡市議を3回務めており、市政・県政の双方に通じた経歴を持ちます。今回は県議を辞職したうえで、退路を断つ形で市長選に臨みました。
選挙戦では、35年にわたる政治活動の経験を強調し、市政の正常化と刷新を訴えました。地元の自民県議や市議が支援に回り、村上泰道市議長や4月の市議選でトップ当選した新田茜氏ら、主だった市議の支持を取り付けて組織戦を展開しました。
公約の柱に据えたのが、総事業費77億8千万円の複合文化施設計画の「白紙撤回」です。あわせて、市長公用車の廃止や副市長の不任用といった「身を切る改革」を掲げ、そこで捻出した財源を学校トイレの洋式化など、市民に身近な課題へ優先配分する考えを示しました。議会との関係については、事前の情報共有に努め、対話を重視する姿勢を打ち出しています。
Q. 戸井田和之氏はどんな人物ですか?
A. 61歳の無所属新人で、元茨城県議です。県議を5回、石岡市議を3回務め、県議会副議長も経験しました。今回は県議を辞職して出馬し、複合文化施設計画の白紙撤回や市長公用車廃止などの「身を切る改革」を訴えました。
戸井田氏が撤回を掲げ、谷島氏が推進してきた複合文化施設とは、そもそもどのような施設で、いくらかかるものなのでしょうか。お金の流れに踏み込んで見ていきます。
最大争点「複合文化施設」77.8億円とお金の流れ
複合文化施設は、1968年に開館し、老朽化のため2020年3月末に閉館した旧石岡市民会館の後継施設として計画されました。建設予定地は石岡駅東側の鹿島鉄道跡地(約7,700平方メートル)で、約800席のメインホールと約200席のサブホール、ギャラリーやアトリエ、音楽スタジオなどを備えます。延床面積は約5,825平方メートル、2030年度の開館を予定しています。
注目すべきは事業費の推移です。市側が2022年に示した当初案は、図書館や公民館の機能も含む事業規模約123億円の構想でした。その後、審議会の答申を受けて図書館機能を省くなど機能を絞り込み、約45億円を圧縮して現行の77億8千万円となった経緯があります。当初案と現行案を比較すると、計画がどう変化したかが見えてきます。
| 項目 | 当初案(2022年) | 現行案(2026年) |
|---|---|---|
| 総事業費 | 約123億円 | 77億8千万円 |
| 主な機能 | ホール+図書館+公民館 | ホール中心(図書館機能を除外) |
| 開館予定 | 未確定 | 2030年度 |
このように、計画は約45億円のスリム化を経て現在の形になりました。
(編集部分析)この施設は民間からの融資ではなく、地方債を中心とする公共投資で賄われます。基本構想の段階では、財源として合併特例債が想定されてきました。合併特例債は充当率95%、元利償還の約7割が地方交付税で措置される有利な起債ですが、それでも残りは市の負担として将来に残ります。ここで見落とせないのが、石岡市自身が公共施設等総合管理計画で「施設総量を20%削減する」方針を掲げている点です。全公共施設を更新すれば今後40年で約1,181億円が必要と試算する一方で、約78億円の新規大型施設を建てる——この緊張関係が、議会側の慎重論の財政的な背景にあると考えられます。当初の123億円から約45億円を削って圧縮した経緯自体、人口減少下で身の丈に合わせる「縮小管理」の難しさを物語っています。なお、現行計画における市債・国庫補助・基金の確定した内訳は、公開資料では確認できませんでした(※確認中)。
Q. 複合文化施設の事業費はいくらですか?
A. 現行計画の総事業費は77億8千万円で、2030年度の開館を予定しています。当初は図書館機能などを含む約123億円規模の案でしたが、機能を絞り込み約45億円圧縮された経緯があります。
この施設を「白紙撤回」する戸井田氏、「継続」を訴えた谷島氏、そして独自の財政再建を掲げた幕内氏。3候補の主張の違いと、今後の市政の行方を見ていきます。
3候補の主張比較と市政正常化の行方
今回の選挙は、複合文化施設の是非と市政の立て直しを軸に、3候補がそれぞれ異なる処方箋を示しました。主な主張を整理すると、対立の構図が明確になります。
| 候補者 | 複合文化施設 | 主な訴え |
|---|---|---|
| 戸井田和之(当選) | 白紙撤回 | 身を切る改革で財源捻出、市政の刷新 |
| 谷島洋司(落選) | 継続 | 議会との対話、産科病院誘致の実現 |
| 幕内幹男(落選) | 見直し | 民間活力の導入で「稼ぐ財政」へ転換 |
施設の扱いだけでなく、財政運営や医療政策でも各候補の方向性が分かれていたことがわかります。
(編集部分析)262票という僅差は、民意がほぼ二分されたことを意味します。施設計画の白紙撤回を訴えた戸井田氏と、継続を訴えた谷島氏の得票はほぼ拮抗しました。市長と議会がともに住民の直接選挙で選ばれる二元代表制のもとでは、両者の緊張関係は本来チェック機能として働くものです。ただ、今回のように不信任の応酬にまで発展すると、市政は1カ月以上も停滞しました。新市長が「白紙撤回」を実行に移せるかどうかは、自らを支えた議会多数派との関係づくりと、僅差で示された継続派の民意をどう受け止めるかにかかっています。混乱の清算が新たな対立を生まないか、就任後の市政運営が問われます。
なお、当サイトでは他地域の市長選も結果を整理しています。僅差で決着した選挙の事例として「蓮田市長選挙2026の結果|山口京子氏が428票差で再選・武藤康史氏との接戦を制す」、新人と現職が争った事例として「西条市長選2026の結果|越智三義氏が初当選・高橋敏明氏が落選した理由」もあわせてご覧ください。
Q. 新市長のもとで複合文化施設はどうなりますか?
A. 戸井田氏は計画の「白紙撤回」を公約に掲げています。ただし当選は262票差の僅差で、計画の継続を訴えた候補の票も多く、議会との調整を含め今後の進め方は流動的とみられます。
参考情報
- 産経新聞「茨城・石岡市長選、2度の不信任で失職の谷島洋司氏敗れる 元県議の戸井田和之氏が初当選」(2026年6月21日)
- 朝日新聞「不信任で失職の前市長、262票差で落選 茨城・石岡市長に戸井田氏」(2026年6月21日)
- 茨城新聞「茨城・石岡市長に戸井田氏 前職と新人破り初当選」(2026年6月21日)
- NHK「茨城 市長失職に伴う石岡市長選挙 戸井田和之氏が初当選」(2026年6月21日)
- 石岡市公式ホームページ「石岡市複合文化施設(市民ホール)整備事業」

