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【8/10】国の借金1346兆円|純債務133%は本当にG7並みか検証

【8/10】国の借金1346兆円|純債務133%は本当にG7並みか検証

財務省は2026年8月10日、国債・借入金・政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」が、6月末時点で1346兆6833億円になったと発表しました。3月末から2兆8407億円増え、過去最大の更新です。7月1日時点の人口推計の概算値をもとに単純計算すると、国民1人当たり約1095万円になります。この発表を受けてSNSでは「政府が持つ国有資産と対外純資産を差し引いた純債務で見れば、日本の財政はG7並みに健全だ」という反論が広がりました。どちらの主張も数字を挙げていますが、実は使われている統計の範囲がそれぞれ違います。この記事では、財務省の原資料、財務省「国の財務書類」、IMFの推計、内閣府の試算に当たり、1346兆円が何を数えた数字なのか、そして「資産を引けば健全」がどこまで成り立つのかを、範囲をそろえて確認します。

この記事でわかること

  • 1346兆円の中身:内国債1211兆7466億円・借入金40兆5374億円・政府短期証券94兆3994億円の合計で、8割超が普通国債です。
  • 「資産を引けば健全」の検証:政府に資産があるのは事実(783.4兆円)ですが、負債は1483.3兆円あり、差額は699.9兆円のマイナスです。
  • 数字を比べる前提:財務省の1346兆円、IMFの債務残高対GDP比236.1%、対外純資産561兆円は、それぞれ数えている主体が違うため、そのまま引き算できません。
目次

国の借金1346兆円は何を合計した数字か

国債と借入金と政府短期証券の3つを足した、国(中央政府)の債務の残高です。企業や家計の借金とは範囲が違います。

財務省が四半期ごとに公表している「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」の令和8年6月末現在の数字が、今回発表された1346兆6833億円にあたります。内訳は次のとおりです。

区分 令和8年6月末 3月末からの増減
内国債 1211兆7466億円 +4兆5278億円
うち普通国債 1110兆8839億円 +6兆5855億円
うち財投債 88兆2854億円 △2兆6360億円
うちその他 12兆5773億円 +5783億円
借入金 40兆5374億円 △3兆7870億円
政府短期証券 94兆3994億円 +2兆999億円
合計 1346兆6833億円 +2兆8407億円

合計だけを見ると一本調子で増えているように映りますが、内訳では増えた項目と減った項目が同居しています。

全体の8割超を占めるのは普通国債1110兆8839億円

1346兆円のうち1110兆8839億円、割合にして約82%が普通国債です。ここが動けば全体が動きます。

普通国債は、税収で足りない分を埋めるために発行される建設国債と特例公債(赤字国債)が中心です。一方、財投債(財政投融資特別会計国債)は、政策金融機関などへの貸付原資を市場から調達するための国債で、対応する貸付金という資産が国の側にあります。政府短期証券は外国為替資金特別会計などが使う短期の資金繰り手段で、こちらも外貨資産が見合いにあります。「国の借金」という一語でくくられていますが、性質は同じではありません。

3月末から2兆8407億円増えた中身

増えたのは普通国債(+6兆5855億円)と政府短期証券(+2兆999億円)で、財投債と借入金は減っています。

差し引きの純増が2兆8407億円です。四半期の増加額としては大きくありませんが、増えている部分が税収不足を埋める普通国債である点は押さえておく必要があります。財投債が2兆6360億円、借入金が3兆7870億円それぞれ減っているために、合計の伸びが小さく見えている構図です。

「国民1人当たり1095万円の借金」という意味ではない

1095万円は総額を人口で割っただけの数字で、国民個人が負う債務ではありません。

財務省の発表では、7月1日時点の人口推計の概算値1億2293万人を用いて単純計算しています。この債務の借り手は政府であり、貸し手は国債を保有する日本銀行・国内の金融機関・年金基金・海外投資家などです。国民の側は、納税者としての将来負担という意味では無関係ではありませんが、同時に預金や年金を通じて国債の貸し手側にも回っています。「1人1095万円の借金を背負っている」という言い方は、この両面のうち片方だけを取り出したものです。

(編集部分析)人口で割るこの見せ方は、報道各社が長年使ってきた定番の表現です。ただ、同じ割り算をするなら、国民1人当たりの政府資産や、1人当たりの対外純資産も併記されて初めて釣り合いが取れます。片側だけを毎回大きく伝えることが、増税やむなしという空気づくりに働いてこなかったかは、冷静に見ておいてよい論点だと評価できます。数字そのものは正確でも、どの数字を選んで見せるかには編集の意思が入ります。

「政府には資産がある」は本当か──783.4兆円の中身

本当です。令和6年度末の国の資産は783.4兆円あります。ただし負債は1483.3兆円です。

差額は699.9兆円のマイナスになります。出典となる財務省「国の財務書類」は、一般会計と特別会計を合算して企業会計の考え方で国の財政をまとめたものです。1346兆円の発表とは別の資料で、範囲も基準も異なります。まず貸借対照表の主な中身を見ます。

資産の部(令和6年度末) 金額 負債の部(令和6年度末) 金額
有形固定資産 198.6兆円 公債 1184.6兆円
有価証券 139.7兆円 公的年金預り金 128.6兆円
貸付金 132.3兆円 政府短期証券 82.0兆円
運用寄託金 118.1兆円 借入金 33.9兆円
出資金 104.6兆円 その他 54.2兆円
現金・預金 55.2兆円
その他(未収金・たな卸資産等) 34.9兆円
資産合計 783.4兆円 負債合計 1483.3兆円

資産の合計は確かに大きいのですが、その中身を見ると、すぐ返済に充てられる性質のものは多くありません。

資産783.4兆円のうち現金・預金は55.2兆円

最大は道路や庁舎などの有形固定資産198.6兆円で、現金・預金は55.2兆円しかありません。

資産の内訳は、有形固定資産に次いで貸付金132.3兆円、運用寄託金118.1兆円、出資金104.6兆円と続きます。いずれも売って返済に回せる性質のものではありません。運用寄託金118.1兆円は、年金特別会計がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に運用を委ねている資産です。出資金104.6兆円は政策金融機関などへの出資で、引き揚げれば政策そのものが止まります。貸付金132.3兆円は財投債の見合いにあたる資産で、これを回収するということは財投債の裏付けを外すということです。現金・預金は55.2兆円で、資産全体の7%にすぎません。「資産があるのだから返せる」という話にするには、その資産が何に使われているかを一つずつ見る必要があります。

負債1483.3兆円が「国の借金」1346兆円より大きい理由

「国の財務書類」の負債には、国債や借入金に加えて、公的年金預り金128.6兆円など将来の給付債務が含まれるためです。

つまり、資産を持ち出して債務と比べるなら、負債の側も同じ資料の1483.3兆円で見るのが筋になります。1346兆円という別資料の数字から783.4兆円を引く計算は、範囲がそろっていません。同じ資料の中で差し引きすると、資産・負債差額は699.9兆円のマイナスです。この差額は令和元年度末の591.8兆円のマイナスから、6年度末までに約108兆円広がっています。

総債務236%・純債務134%──資産を引けば財政は健全なのか

IMFの2025年10月推計で、日本の総債務は対GDP比236.1%、純債務は133.9%です。

ただしこれは一般政府ベースの数字で、財務省の1346兆円とは数える範囲が違います。純債務は、債務の総額から政府が持つ金融資産を差し引いた数字です。国際比較でこの指標を使うこと自体は正当な手法で、高市政権も純債務残高対GDP比の段階的な引き下げを財政運営の目標に掲げています。同じIMFの推計では、カナダは総債務111.3%に対して純債務12.5%と、差が非常に大きく出ます。

ここで注意が必要なのは、この記事に出てくる数字が、それぞれ違う主体を数えているという点です。

図解:4つの数字は、それぞれ誰を数えているか

1346兆6833億円

国(中央政府)の国債・借入金・政府短期証券/財務省

資産783.4兆円・負債1483.3兆円

一般会計+特別会計/財務省「国の財務書類」

総債務236.1%・純債務133.9%

一般政府(国+地方+社会保障基金)/IMF

対外純資産561兆7504億円

政府・企業・金融機関・家計を含む日本全体/財務省

主体が違うため、別の枠の数字どうしを直接引き算することはできません。

この4つを混ぜて引き算すると、どちら側の主張であっても結論が動いてしまいます。

純債務に差し引かれる資産にはGPIFの積立金が入る

GPIFの運用資産258.7兆円も、政府の金融資産として純債務の計算に影響します。

これは将来の年金給付に充てるための資産です。純債務が総債務よりはるかに小さく出るのは、日本政府が多額の金融資産を持っているからです。ただしその中身は、年金の積立金や外貨準備、政策金融機関への出資など、用途が決まっているものが中心になります。純債務という指標は「明日の返済に回せる余剰資産だけを引いた数字」ではありません。純債務で見ること自体は妥当でも、そこから「だから返済の心配はない」と一足飛びに進むのは、指標の意味を超えています。

(編集部分析)緊縮と増税に議論を寄せるために総債務だけを強調する説明にも、逆に資産を無条件に引き算して問題なしとする説明にも、同じ弱点があります。どちらも自分の結論に都合のよい範囲の統計を選んでいるという点です。財政の議論で守るべきなのは、国民の可処分所得と国内の実体経済であって、特定の指標そのものではありません。だからこそ、どの数字を使うかを決める前に、その数字が誰を数えているかを確認する手順が要ると評価できます。

対外純資産561兆円は政府の借金から引けない

対外純資産は政府だけでなく企業や家計も含む日本全体の残高で、政府債務の返済原資になりません。

海外に持つ資産から対外負債を引いた残高であり、政府が処分できる資産ではないためです。SNSで拡散した主張では「471兆円の対外純資産」という数字が使われていましたが、これは2023年末時点で公表された471兆3061億円で、2年半前のものです。財務省が2026年5月26日に公表した最新値は、2025年末で561兆7504億円でした。対外資産1805兆6342億円から対外負債1243兆8838億円を引いた残高で、前年末から23兆6495億円(4.4%)増えています。

時点・国 対外純資産 順位
日本(2023年末・当時の公表値) 471兆3061億円 世界最大(33年連続)
日本(2025年末) 561兆7504億円 世界3位
ドイツ(2025年末) 675兆5374億円 世界1位
中国(2025年末) 636兆3391億円 世界2位

金額そのものは増えているのに順位は下がっている、という2つの事実が同時に起きています。

日本は2023年末まで33年連続で世界最大の対外純資産国でしたが、2024年末にドイツに、2025年末には中国にも抜かれ、3位になりました。財務省は、ドイツと中国の貿易黒字が日本を上回って推移していることを背景に挙げています。「世界最大の債権国だから安心だ」という説明は、少なくとも現在形では使えません。

(編集部分析)順位の後退そのものを悲観する必要はありませんが、内訳は見ておく価値があります。日本の対外純資産の増加には円安による評価額の膨らみが効いており、稼ぐ力そのものの伸びとは分けて考える必要があります。国富が海外の資産として積み上がる一方で、国内への投資と賃金がどれだけ伸びたのか。国民の暮らしに返ってくる形になっているかを問うことは、主権と自立の観点からも意味があると評価できます。

財政負担を見るなら残高だけでなく利払費を見る

令和8年度予算の利子及割引料は13兆371億円で、前年度当初から2兆5142億円増えました。

金利が上がる局面では、残高より先にこちらが効いてきます。残高は一年でそう大きくは動きませんが、利払費は金利の水準に応じて毎年の予算を直接圧迫します。令和8年度の国債費全体は31兆2758億円で、前年度から3兆579億円増えました。ただしこの31兆円をすべて「借金のコスト」と読むのは誤りです。

図解:国債費31兆2758億円の内訳(令和8年度予算)

債務償還費 18兆2086億円

元本の返済に充てる分。借り換えを含む資金繰りの部分で、コストではありません(前年度比+5393億円)。

利子及割引料 13兆371億円

実際の利払い。ここが金利上昇で膨らむ部分です(前年度比+2兆5142億円)。

増加額3兆579億円のうち、8割超にあたる2兆5142億円が利払いの増加です。

元本の償還と利払いを分けて見ると、いま何が起きているかがはっきりします。

普通国債の利率加重平均は、令和6年3月末の0.77%から令和7年3月末には0.83%へ上がっています。長く続いた低金利の下では、残高が増えても利払いはさほど増えませんでした。その前提が変わりつつある以上、注目すべき指標は残高の大きさから、毎年の利払いが税収のどれだけを食うかへ移っていきます。財政の健全性を語るなら、総債務か純債務かという入口の議論と同じくらい、この出口の数字を見る必要があります。

28年ぶりのPB黒字、なぜ「国・地方」で見ると話が変わるのか

国の一般会計は1.3兆円の黒字ですが、政府の健全化目標は国・地方を合わせた別の指標で測るためです。

令和8年度当初予算の黒字は平成10年度以来28年ぶりになります。プライマリーバランス(基礎的財政収支)は、国債の元利払いを除いた歳出を、国債発行以外の収入でどれだけ賄えているかを示す指標です。令和8年度予算では新規国債発行額が29兆5840億円と2年連続で30兆円を下回り、公債依存度は24.2%になりました。令和8年度末の普通国債残高は1145.4兆円、対名目GDP比165.5%と、前年度末から3.1ポイント改善する見込みです。名目GDPは2025年度に669兆9970億円と5年連続で過去最高を更新しており、分母が伸びていることも比率の改善に効いています。

一方、内閣府が2026年1月22日に示した「中長期の経済財政に関する試算」では、SNAベースの国・地方のプライマリーバランスについて、2026年度にPB目標を掲げた2001年度以降で最も改善し、歳入と歳出が概ねバランスした姿を実現する見込みだとしています。国の一般会計だけを見た黒字と、国・地方を合わせた収支は別の指標であり、前者が黒字だからといって後者も同じ幅で黒字になるわけではありません。ここでも、どの範囲を測っているかを確認することが先になります。

(編集部分析)28年ぶりという事実は、税収が伸びたことと歳出の伸びを抑えたことの両方によるものです。ただし税収の伸びは物価上昇を通じた面が大きく、家計から見れば負担増と表裏一体でもあります。財政の数字が良くなったこと自体を成果として語る前に、その改善が国民の可処分所得を削って得られたものかどうかを見るべきだと評価できます。税収と国民負担の関係については「税収84兆円で過去最高|財務省はなぜ増税を続けるのか」で整理しています。

財源をめぐる議論の全体像もあわせて確認したい方はこちら
→ 【7/30】食料品の消費税1%を首相指示|参院2議席不足で法案は通るのか

国の借金1346兆円のよくある質問

ここまでの内容に関連して、検索でよく尋ねられている疑問を3つ整理します。

Q. 国の借金1346兆円は、本当に国民1人当たり約1095万円なのですか。

A. 割り算としては正しく、財務省の発表でも7月1日時点の人口推計の概算値1億2293万人で単純計算した数字として示されています。ただし借り手は政府であって国民個人ではなく、国民は預金や年金を通じて貸し手の側にも回っています。1人当たりの負債だけを示すのであれば、1人当たりの政府資産も併せて見るのが公平です。

Q. 日本政府の資産を差し引くと、国の借金はいくらになりますか。

A. 同じ資料の中で差し引くのが前提です。財務省「国の財務書類」の令和6年度末では、資産783.4兆円に対して負債1483.3兆円で、資産・負債差額は699.9兆円のマイナスになります。1346兆円という別資料の数字から783.4兆円を引く計算は、集計の範囲がそろっていないため成り立ちません。

Q. 対外純資産561兆円を国の借金から差し引くことはできますか。

A. できません。対外純資産は政府だけでなく企業・金融機関・家計を含む日本全体が海外に対して持つ資産から負債を引いた残高で、政府が処分できる資産ではないためです。2025年末は561兆7504億円で過去最大を更新しましたが、ドイツ・中国に次ぐ世界3位になっています。

いずれの疑問も、答えの分かれ目は「その数字が誰を数えているか」に行き着きます。原資料は以下にまとめました。

参考情報

この記事を書いた人:あいすべ(監修・編集統括)

健診・治験の現場で10年以上、臨床データの精査に従事。地方公務員として公立病院に勤務し、経営推進課の責任者を経てマーケターに転身。データ検証と実践哲学(葉隠)の両面から、情報のバイアスを見抜く視点で「大和帰郷」を運営しています。資格・経歴は実在し、求めに応じて証憑を提示できます。。

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