防衛省が2026年8月4日に公表した令和8年版防衛白書をめぐり、日本と中国の海空戦力の隻数・機数を並べた比較が改めて注目を集めています。潜水艦は中国58隻に対し海上自衛隊22隻、作戦機は中国空軍1838機に対し航空自衛隊344機。この記事では、白書に載った数字そのものと、その数字が拾えていないもの、そして7月から8月にかけて日本周辺で実際に起きた艦艇の動きを、公表資料をもとに整理します。
この記事でわかること
- 数字の実像:潜水艦58対22、水上戦闘艦104対52、作戦機1838対344という開きが、白書の記載から確認できます。
- 白書の新機軸:令和8年版は598ページで過去最多、無人機とAIによる「新しい戦い方」を新たに扱いました。
- 数字の外側:7月16日から8月3日にかけて中国艦3隻が日本列島をほぼ一周し、8月13日にはロシア潜水艦が与那国島と西表島の間を通過しています。
防衛白書2026が示した日中の戦力差はどれくらいか
潜水艦は中国58隻に対し海上自衛隊22隻、作戦機は1838機に対し344機です。
これらは令和8年版防衛白書の記載を、乗りものニュースが装備区分ごとに集計して並べた数字です。白書そのものが「日中比較表」を掲げているわけではなく、中国側の保有数と自衛隊側の保有数を、それぞれの記述から拾って対置したものである点は押さえておく必要があります。まず全体像を一覧で確認します。
| 区分 | 中国 | 日本 | おおよその開き |
|---|---|---|---|
| 近代的な潜水艦 | 58隻 | 22隻 | 約2.6倍 |
| 駆逐艦・フリゲート | 104隻 | 52隻(護衛艦) | 約2倍 |
| 小型フリゲート(コルベット) | 50隻 | 上記に含む | 合算で約3倍 |
| 作戦機 | 1838機 | 344機 | 約5.3倍 |
| 1000トン以上の巡視船・公船 | 175隻(海警局) | 81隻(海上保安庁) | 約2.2倍 |
表のとおり、海上戦力・航空戦力・海の警察力のいずれでも、日本側が数の面で下回っています。以下、区分ごとに内訳を見ていきます。
海の戦力|潜水艦58対22、水上戦闘艦104対52
近代的な潜水艦は中国58隻・海自22隻、駆逐艦とフリゲートは104隻・52隻で、いずれも2倍から3倍の開きがあります。
中国側の58隻は、ジン(晋)級、シャン(商)級、ソン(宋)級、ユアン(元)級、そしてロシアから輸入したキロ級の合計です。このうちジン級とシャン級は原子力潜水艦で、通常動力型に比べて長時間の潜航が可能とされます。海上自衛隊の潜水艦22隻は2026年3月末時点の数字で、すべて通常動力型です。
水上戦闘艦は、レンハイ(南昌)級、ルフ(旅滬)級、ルーハイ(旅海)級、ソブレメンヌイ級、ルーヤンIII(昆明)級、ルージョウ(瀋陽)級といった駆逐艦と、ジャンウェイ(江衛)級・ジャンカイ(江凱)級のフリゲートを合わせて104隻。これに対して海上自衛隊の護衛艦は2026年3月末時点で52隻です。さらに中国が50隻を保有するジャンダオ(江島)級小型フリゲート(コルベット)を加えると、差は約3倍まで広がります。
空の戦力|作戦機1838機に対し航空自衛隊344機
中国空軍の作戦機は1838機、航空自衛隊は344機で、機数では5倍を超える差がついています。
中国側の内訳はSu-27/Su-30/Su-35、J-11B/J-16、J-10、そして第5世代機とされるJ-20、J-35。航空自衛隊はF-15、F-2、F-35A/Bの344機(2026年3月末時点)です。世代構成でみれば、双方とも第5世代機の配備を進めている段階にあります。
海の警察力|1000トン以上で海保81隻・中国海警175隻
海上保安庁の1000トン型以上は81隻、中国海警局の1000トン級以上は175隻で、2倍以上の差です。
ただしこの2つの数字は比較の基準がそろっていません。海上保安庁の81隻は2025年度末時点の「1000トン型(総トン数)以上」、中国海警局の175隻は2024年12月末時点の「1000トン級(満載排水量)以上」です。基準日も、トン数の測り方も異なります。
(編集部分析)尖閣諸島周辺で日々対峙しているのは海上自衛隊ではなく海上保安庁です。その海保が、装備の性格が異なるとはいえ、隻数で相手方の半分以下という状態が続いていることは、法執行の現場に過大な負荷を強いる構図と評価できます。数字の基準がそろっていない点も含め、国民が現状を正確に把握できる形で公表されることが望まれます。
令和8年版防衛白書は何を新しく書いたのか
2026年8月4日に公表された令和8年版は598ページと過去最多で、無人機とAIによる「新しい戦い方」を新たに扱いました。
白書は毎年発刊されていますが、今回は安全保障関連三文書の前倒し改定を控えた節目の年の白書という位置づけです。ロシア・ウクライナ戦争以降に顕在化した無人航空機(ドローン)や人工知能(AI)を使った「新しい戦い方をめぐる動向」が新規項目として加わり、第Ⅳ部は「防衛生産・技術基盤の強化」として防衛産業・科学技術の記述が拡充されました。要点を図で整理します。
図解1:令和8年版防衛白書の3つの新機軸
1. 新しい戦い方
ドローンとAIによる戦闘様相の変化を新規項目として追加
2. 生産・技術基盤
第Ⅳ部を「防衛生産・技術基盤の強化」に組み替え記述を拡充
3. 中露北の連携
爆撃機の共同飛行など、3か国の連携深化を具体例つきで記載
出典:防衛省「令和8年版防衛白書」(2026年8月4日公表)の報道各社による要約
この3点は、いずれも「装備の数をそろえる」だけでは対応できない領域です。次に、白書が示した基本認識を確認します。
テーマは「未来につながる安全保障」
今回のテーマは「未来につながる安全保障」で、対象期間は2025年4月から2026年3月までです(一部の重要事象は5月まで)。
白書は、国際社会が戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しているとの認識を示しました。グローバルなパワーバランスの変化にともない、米中の国家間競争が今後いっそう激しさを増す可能性がある、との見方も記されています。なお防衛省は今回、白書の紹介動画を初めて制作しています。
中国を「これまでにない最大の戦略的挑戦」と位置づけ
白書は中国の軍事動向を「わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的挑戦」と記しています。
具体的な記述としては、空母「遼寧」「山東」に加えて3隻目の「福建」を運用していること、2025年6月に空母が硫黄島より東側の海域で活動したことを初めて確認・公表したこと、太平洋上で空母2隻が活動したことなどが挙げられています。台湾については「中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に急速に傾斜する形で変化している」との認識が示されました。
中露北の連携についても、2025年12月に中露の爆撃機が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過し、共同飛行として初めて太平洋上を四国沖まで長距離飛行したこと、同年9月に中露朝の首脳3人が並び立つ姿が示されたことが記載されています。台湾情勢の見方については「習近平『日米包囲網』の虚実|米国は台湾を守るか」でも扱っています。
Q. 「最大の戦略的挑戦」という表現は今回が初めてですか。
A. 初めてではありません。中国を「これまでにない最大の戦略的挑戦」と位置づける表現は2022年の国家安全保障戦略以降、政府文書で継続して使われており、令和8年版白書はその認識を維持したうえで、空母の運用実績など裏づけとなる事例を追加した形です。
では、こうした記述の背景で、実際に日本周辺の海ではどのような動きがあったのでしょうか。
数字の外側で7〜8月に何が起きていたか
中国艦3隻が日本列島をほぼ一周し、ロシアの潜水艦が与那国島と西表島の間を往復しました。
いずれも防衛省統合幕僚監部が公表した艦艇動向です。白書に載る保有数は静的な在籍数ですが、実際の安全保障環境は、その艦艇がどこを、どの頻度で動いているかで決まります。時系列で整理します。
| 時期 | 海域 | 確認された動き |
|---|---|---|
| 7月1〜2日 | 対馬海峡 | ロシア海軍の潜水艦・救難艦が南西進 |
| 7月16日 | 宮古海峡 | 中国艦が通過し太平洋へ |
| 7月19日 | 沖ノ鳥島沖のEEZ内 | 中国海軍が射撃訓練を実施 |
| 7月19日 | 与那国島・西表島間 | ロシア潜水艦が南西進し太平洋へ |
| 7月27〜29日 | 宗谷海峡 | 中露の艦艇計4隻が西進し日本海へ |
| 8月2〜3日 | 対馬海峡 | 中国艦が南西進し東シナ海へ抜ける |
| 8月13日 | 与那国島・西表島間 | ロシア潜水艦が北東進し東シナ海へ戻る |
7月から8月の約1か月半で、日本列島の南西端・北端・西側の3方向で艦艇の通過が確認されたことになります。主要な2件を個別に見ていきます。
中国艦3隻が7月16日から8月3日にかけて日本列島をほぼ一周
宮古海峡から太平洋に出た3隻が、宗谷海峡を経て日本海に入り、対馬海峡から東シナ海へ抜けました。
確認されたのは、レンハイ級(055型)ミサイル駆逐艦「鞍山(103)」、ルーヤン(旅洋III)級ミサイル駆逐艦「開封(124)」、フチ級補給艦「可可西里湖(903)」とみられる3隻です。7月16日に宮古海峡を抜けて太平洋に出たあと、沖ノ鳥島や南硫黄島の南を経て千葉県沖に迫り、東北沿岸を北上。7月27日午前8時ごろには宗谷岬の北東約70キロの海域を西進しているところが確認され、7月29日には中国海軍とロシア海軍の艦艇計4隻が宗谷海峡を西進したことが公表されました。
その後、8月2日午後9時ごろに対馬の北東約50キロの海域を南西進し、2日から3日にかけて対馬海峡を南西進して東シナ海へ向かっています。航路の大部分が日本の排他的経済水域(EEZ)内を通っており、7月19日には沖ノ鳥島近海で射撃訓練も実施されました。中国海軍による同種の行動については「中国が原潜からミサイル発射|和歌山沖EEZ着弾の真相」でも取り上げています。
(編集部分析)EEZ内の航行そのものは国際法上、直ちに違法とは言えません。問題は、その航路の取り方と射撃訓練の実施が、日本に対して「いつでもここまで来られる」という意思表示として機能している点にあります。抗議の有無を論じるだけでなく、常続監視をどこまで自前で続けられるかという能力の問題として受け止める必要があると評価できます。
ロシア潜水艦が与那国・西表間を7月19日と8月13日に往復
7月19日に太平洋へ南西進した同じ2隻が、8月13日に同じ海域を北東進して東シナ海へ戻りました。
統合幕僚監部の公表によれば、8月13日午後4時ごろ、与那国島(沖縄県)の南約80キロの海域で、ロシア海軍のキロ改級潜水艦とイゴリ・ベロウソフ級潜水艦救難艦の計2隻が確認されました。2隻はその後、与那国島と西表島の間の海域を北東進し、東シナ海へ向けて航行しています。
この2隻は、7月1日から2日にかけて対馬海峡を南西進し、7月19日に与那国島と西表島の間を南西進して太平洋へ向かったものと同一とされます。つまり同じ海峡を、往路と復路で通ったことになります。警戒監視と情報収集にあたったのは、第5哨戒防備隊(大湊)所属の護衛艦「おおよど(DE-231)」です。
Q. 与那国島と西表島の間を外国の艦艇が通るのは違法ではないのですか。
A. 直ちに違法とは言えません。同海域は国際航行に使われる海峡にあたり、外国艦艇の通航自体は認められています。ただし潜水艦が浮上して航行しているかどうかなど、態様によって扱いは変わるため、海上自衛隊が艦艇や航空機で警戒監視と情報収集を行い、動向を公表しています。
ここまでが公表資料で確認できる事実です。次に、隻数の差をどう読むべきかを整理します。
隻数の差は、そのまま戦力の差なのか
隻数は戦力の一面にすぎませんが、同時に何か所へ張り付けられるかという点では、数の差が直接効いてきます。
「2倍」「3倍」という表現は強い印象を与えますが、何を測った数字なのかを分けて考える必要があります。白書の数字が拾っているものと、拾っていないものを整理します。
図解2:隻数の一覧が拾うもの/拾わないもの
拾っているもの
保有する隻数・機数/艦級と機種の内訳/原子力か通常動力かの別/公表時点の在籍数
拾っていないもの
整備中を除いた稼働数/乗員の充足と練度/弾薬・部品の備蓄/比較する数字の基準日のずれ
この左右の違いが、数字の読み方を分けます。それぞれ具体的に見ていきます。
白書の数字が拾っているもの|隻数・機数と艦級の内訳
拾っているのは保有する隻数・機数と艦級の内訳で、いずれも公表時点の在籍数を並べたものです。
この点では、中国側の58隻のうちジン級・シャン級が原子力潜水艦であるという内訳は重要です。原子力潜水艦は燃料補給を要さず長期間の潜航が可能とされ、行動可能な範囲が通常動力型と異なります。単純な隻数の比較以上に、艦種構成の違いが作戦の幅を左右する部分といえます。
白書の数字が拾っていないもの|稼働率・乗員・基準日のずれ
稼働率、乗員の充足と練度、そして比較する数字の基準日のずれは、隻数の一覧には含まれていません。
艦艇はつねに全隻が動けるわけではなく、定期整備やドック入りで一定数が稼働から外れます。乗員の確保状況も稼働に直結します。また前述のとおり、海上保安庁と中国海警局の隻数は基準日もトン数の測り方も異なっており、「81対175」をそのまま同条件の比較として読むことはできません。
(編集部分析)とはいえ、これらの留保は「だから心配ない」という結論には結びつきません。むしろ稼働率や乗員の充足は、隻数よりもさらに数を絞り込む方向に働く要素です。一方で、相手方の数字にも同じ留保が当てはまります。数字を過大にも過小にも扱わず、同じ条件で比較できる形の公表を求めていくことが、議論の出発点になると評価できます。
日本がいま詰めるべき論点はどこか
数を追うより、同時に対応できる海域の数と、装備を維持し続ける生産・整備の体力が論点になります。
7月から8月の動向が示したのは、南西方向と北方の両方で同時に警戒監視が必要になる状況です。8月13日のロシア潜水艦の監視にあたったのは、大湊を母港とする第5哨戒防備隊の護衛艦でした。北の部隊が南西の海域を担当していること自体が、部隊のやりくりの実態を映しているとも読めます。
(編集部分析)保有数を増やすという議論は、作るところまでで完結しません。艦艇も航空機も、整備し、乗員を育て、部品と弾薬を切らさずに供給し続けて初めて数として意味を持ちます。防衛産業の生産能力については「防衛産業の生産能力が課題|100社超撤退と増産の壁を解説」で触れたとおり、撤退企業の増加という構造的な問題を抱えています。国産で持ちこたえられる基盤をどう再建するかは、自主防衛の観点から避けて通れない論点だと評価できます。
(編集部分析)もう一点、白書の数字を「中国という国家」の話として受け止め、隣国の国民への感情に転化させないことも重要です。問題にすべきは軍事力の使われ方と、それを決める政治の側であり、そこを混同した議論は日本の立場を弱めます。事実と数字に基づいて冷静に備えを積み上げることが、結果として日本人の誇りと自立を取り戻す道につながると考えます。中国側の対日発信の手法については「中国が海自「Japan Navy」音声を公開|憲法違反と警告した背景」も参考になります。
防衛白書と日中の戦力差のよくある質問
白書そのものの読み方や、比較の前提について寄せられやすい疑問をまとめます。
Q. 防衛白書はどこで読めますか。有料ですか。
A. 防衛省の公式サイトで全文が無料公開されています。書店で販売される冊子版・ビジュアル版は有料ですが、内容の閲覧自体に費用はかかりません。令和8年版は2026年8月4日に公表されました。
Q. 防衛白書は毎年いつ公表されますか。
A. 例年7月から8月にかけて閣議に報告されたうえで公表されます。令和8年版は2026年8月4日の公表で、対象期間は2025年4月から2026年3月まで(一部の重要事象は5月まで)です。
Q. 海上自衛隊の潜水艦22隻という数は増える見込みですか。
A. 令和8年版防衛白書の記載からは、2026年3月末時点で22隻という事実までしか確認できません。将来の隻数は今後の防衛力整備計画の内容によるため、本記事では見通しを断定しません。
Q. 中国の空母は何隻ありますか。
A. 白書には「遼寧」「山東」に加えて3隻目の「福建」を運用しているとの記載があります。2025年6月には空母が硫黄島より東側の海域で活動したことが初めて確認・公表され、太平洋上で空母2隻が活動した事例も記されています。
数字の読み方と実際の動きを合わせて追うことで、白書の記述はより具体的に理解できます。
参考情報
- 防衛省「令和8年版防衛白書」(2026年8月4日公表)
- 乗りものニュース「潜水艦は自衛隊の3倍、戦闘機は6倍!? 最新「防衛白書」が突きつける中国の圧倒的な脅威」(2026年8月17日)
- J ディフェンス ニュース「ロシア海軍潜水艦と潜水艦救難艦が与那国島・西表島間から東シナ海へ航行(8月13日、キロ改級、イゴリ・ベロウソフ級)」
- Funeco「ロシア海軍のキロ改級潜水艦と救難艦「イゴリ・ベロウソフ」、与那国島と西表島の間を北東進し東シナ海へ 護衛艦「おおよど」が警戒監視」
- Funeco「沖ノ鳥島沖EEZ内海域で射撃訓練を実施した中国海軍ミサイル駆逐艦「開封」など3艦、対馬海峡を南西進し東シナ海へ 日本列島を周回」
- 共同通信「中国艦、列島ほぼ一周 対馬海峡南下、東シナ海へ」(2026年8月3日)
- 防衛省統合幕僚監部 公表資料(艦艇の動向について)

