皇族数の確保を目的とした改正皇室典範が2026年7月17日に成立しました。その審議の過程で、宮内庁側が国会で示したとされる「旧宮家の男系男子と天皇陛下とは36〜38親等の隔たりがある」という数字が、大きな波紋を広げています。作家の竹田恒泰氏は「宮内庁は舐めているのか」と強く反発し、「血統と血縁の違いを敢えて無視している」と斬り込みました。この記事では、竹田氏の主張を軸に、この「36〜38親等」報道の何が問題なのか、そして日本にとって本当に守るべきものは何かを、確定した事実にもとづいて解き明かします。
この記事でわかること
- 竹田氏の核心:「親等の遠近(血縁)」と「男系血統の連続」はまったく別の物差しである、という一点。
- 問題の答弁:宮内庁次長が国会で「36〜38親等」と説明したとされ、旧宮家を「天皇家とほぼ無関係な一般人」に見せる印象を与えかねない、と竹田氏は反発。
- 改正の中身:旧宮家系の男系男子を養子に迎える案が柱。養子本人には皇位継承資格はなく、その子・子孫に継承資格が生じる。
- 本質:問われているのは「近い親戚か」ではなく「男系の系譜が切れずに続いているか」。皇統を守ることは、この国の存立にかかわる最優先事項である。(編集部分析)
竹田恒泰氏が「舐めているのか」と怒った理由|「36〜38親等」答弁とは
まず、何が起きたのかを事実で押さえます。皇室典範改正の国会審議で焦点となったのが、旧宮家系の男系男子と現在の天皇陛下との「距離」を示す数字でした。
2026年7月10日、衆院議運委での「36〜38親等」答弁
報道によれば、宮内庁の緒方禎己(おがた・よしみ)次長は2026年7月10日の衆議院議院運営委員会で、日本共産党の塩川鉄也氏の質問に答え、1947年に皇籍を離脱した旧11宮家の男系男子と天皇陛下との間には「36親等から38親等の隔たりがある」と説明しました。あわせて、この系譜は崇光天皇の皇子・栄仁親王に始まる伏見宮系で、1428年に枝分かれしたものと説明されています。この答弁は共同通信・毎日新聞などの主要メディアが報じ、SNS上でも「一般人レベルの距離」「赤の他人ではないか」といった驚きの声が広がりました。
竹田氏の主張=「血統と血縁の違いを敢えて無視」
これに真っ向から噛みついたのが竹田恒泰氏です。竹田氏は自身の動画で、宮内庁が「36〜38親等」という数字を前面に出すことで、「旧宮家は天皇家とほとんど無関係」「600年前に分かれた遠い親戚にすぎない」「だから養子案は不自然だ」という印象を国民に植えつけようとしているのではないか、と強く疑問を呈しました。動画タイトルにある「血統と血縁の違いを敢えて無視」という言葉が、その主張をそのまま言い表しています。
(編集部分析)この問題提起には、率直に言って一理ある。「36親等」と言われれば、普通の感覚では「もう赤の他人だろう」と感じてしまう。その心理的効果を踏まえたうえで数字だけを示せば、議論の前提そのものが一方向へ傾く。皇統をどう継ぐかという国家の根幹を論じる場で、国民の直感を誘導しかねない説明の仕方には、警戒すべき理由があると評価できる。
核心|「血統」と「血縁」はどう違うのか
竹田氏の議論を理解する鍵は、混同されがちな二つの言葉を分けることにあります。ここが本記事の最重要ポイントです。
血縁(親等)
共通の祖先を持つ系譜的なつながり全般。父方も母方も含む。世代数の合計で数える。旧宮家は現在の陛下と36〜38親等=非常に遠い。
男系血統
父→父方の祖父→その父…と、男性だけを通ってさかのぼる系統。旧11宮家は伏見宮系で、男系をたどれば皇統につながっている=切れていない。
親等は「世代数の合計」=計算上は間違いではない
まず公正に確認すべきは、宮内庁の数字それ自体は誤りとは言えない、という点です。親等とは共通祖先までさかのぼる世代数の合計であり、何百年も前に分かれた家系なら36親等・38親等という大きな数字になること自体は、計算方法として矛盾しません。民法上の「親族」は六親等以内ですから、日常感覚では確かに「遠い」数字です。
しかし問われているのは「男系が続いているか」である
竹田氏が突いているのは、まさにここです。皇位継承で問われているのは「近い親戚か」ではなく「男系が切れずに続いているか」です。世代数が大きいことと、男系の系譜が途切れたことは、まったく別の話です。旧11宮家はいずれも伏見宮系で、男系をたどれば皇統につながります。親等の数字は、その事実を何ら否定しません。両者の物差しの違いを整理すると、次のようになります。
| 観点 | 血縁(親等) | 男系血統 |
|---|---|---|
| 数え方 | 共通祖先までの世代数の合計 | 父系を一本にたどる系譜 |
| 旧宮家の位置 | 現陛下と36〜38親等(遠い) | 伏見宮系で皇統につながる(切れていない) |
| 皇位継承での意味 | 直接の判断基準ではない | これこそが継承資格の核心 |
竹田氏が支持する「旧宮家養子案」とは|2026年改正の中身
竹田氏は、旧宮家系の男系男子を養子に迎える案を、男系継承を維持するための現実的な方策として支持しています。では、実際に成立した改正はどんな内容だったのか。事実を整理します。
| 改正の柱 | 内容 |
|---|---|
| 旧宮家からの養子 | 1947年に皇籍離脱した旧11宮家の子孫で、妻子のいない15歳以上の男系男子を、皇族が養子に迎えることを可能に |
| 皇位継承資格 | 養子本人には継承資格なし。養子となった後に生まれた子・子孫は継承資格を持つ |
| 女性皇族の皇籍保持 | 従来の第12条(婚姻による皇籍離脱)を見直し、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保てるように |
この改正は7月17日、参院本会議で与党のほか日本維新の会・国民民主党・公明党・参政党などの賛成多数で可決・成立しました(立憲民主党・共産党・れいわ新選組は反対)。
養子本人は継承資格なし、その子・子孫に継承資格
ここは誤解が多い点なので明確にします。改正では、養子となった本人には皇位継承資格を認めていません。継承資格が生じるのは、養子となった後に生まれた男子(その子・子孫)です。官邸の会見でも、この「養子の子に継承資格を持たせる」点について、立法府の取りまとめにはなかった内容だとして野党から批判が出たことが説明されています。皇統を守る目的に賛成する立場からこそ、その決め方が拙速であってはならない――この論点は丁寧に受け止める必要があります。(編集部分析)
竹田氏「明治天皇の皇女は旧宮家へ嫁いだ」=無関係ではない
竹田氏が「血縁の面でも赤の他人ではない」と強調する根拠の一つが、近代の婚姻の歴史です。明治天皇の皇女は、竹田家(竹田宮)・北白川家(北白川宮)・朝香家(朝香宮)・東久邇家(東久邇宮)といった旧宮家に降嫁しており、旧宮家は天皇家と近い時代にも婚姻でつながってきました。「600年前に分かれたきりの遠い親戚」という一面的な理解は、この歴史を捨象している――これが竹田氏の指摘です。男系の系譜だけでなく、比較的近い時代の血縁の往来という観点からも、旧宮家は皇室と無縁の存在ではない、というわけです。
女性天皇と女系天皇は別物|混同が国体を溶かす
皇統をめぐる議論のもう一つの落とし穴が、「女性天皇」と「女系天皇」の混同です。ここを分けて理解しないと、議論はなし崩しに進みます。
女性天皇(前例あり)
天皇本人が女性。父方をたどれば歴代天皇につながる(=男系女子)。推古・持統天皇など8人10代の前例がある。
女系天皇(前例なし)
母方でしか歴代天皇につながらず、父方が皇統に属さない天皇。日本の歴史に、一般に認められる前例は存在しない。
たとえば愛子内親王殿下がもし即位されれば、それは「女性天皇」であり「男系」です。父・今上陛下から男系でつながるからです。一方、内親王殿下が民間男性と結婚され、そのお子さまが継がれる場合、その方は母方からしか皇統につながらず「女系天皇」と呼ばれます。過去の女性天皇はいずれも男系女子であり、その点を整理すると次の通りです。
| 区分 | 父方が皇統か | 歴史上の前例 |
|---|---|---|
| 男系男子 | つながる | 歴代天皇の原則 |
| 男系女子(女性天皇) | つながる | 8人10代(推古・持統ほか) |
| 女系(女系天皇) | つながらない | 一般に認められる前例なし |
(編集部分析)「女性が天皇になれるか」と「女系を認めるか」は、まったく次元の違う判断だ。前者は歴史に前例があるが、後者は二千年一度もなかった一線を越える話である。「英国にも女王がいたのだから日本も」という議論がしばしば持ち出されるが、王家の名称すら国家が別に管理する英国と、父系の連続そのものを国体としてきた日本を同列には論じられない。「女性でよいのなら女系でも」という錯覚に流されないことこそ、国体を守る要諦だと考える。
公正のために|竹田氏の論にも注意すべき点はある
竹田氏の問題提起は的を射ていますが、その熱量ゆえに踏み込みすぎる部分もあります。ここを正直に押さえることが、かえって主張の芯を強くします。
- 「男系なら実質的にも近い家族」ではない。男系でつながることは系譜上のカテゴリーとして重要だが、36〜38親等という数字が示す通り、個人間の血縁は非常に遠いのも事実。「男系の系統が同じ」ことと「家族として近い」ことは別である。
- 「Y染色体が同じ」という説明は慎重に。男系論でよく使われる表現だが、歴代天皇や旧宮家全体についてDNA検査で連続性が実証されているわけではない。皇統の男系性は、あくまで皇統譜や歴史的系図にもとづく制度的・歴史的理解である。
- 「宮内庁が女系天皇を企てている」とまでは断定できない。宮内庁は制度を決める立法機関ではなく、皇室典範を改正するのは国会だ。国会で問われた計算結果を答えた、という見方も十分に成り立つ。
(編集部分析)とはいえ、これらは竹田氏の主張の核を崩すものではない。むしろ、政府・宮内庁の側が「傍系としては36〜38親等と遠いが、父系をたどれば皇統につながる皇別の子孫である」と両方をセットで丁寧に説明すべきだった――そこに批判の本丸がある。数字だけを独り歩きさせた説明が、議論の入り口を歪めた。その一点を竹田氏は突いている。
まとめ|数字の向こうにある「国のかたち」(編集部分析)
事実として、現行皇室典範は皇位を「皇統に属する男系の男子」に限っています。過去の女性天皇はいずれも男系女子であり、女系の前例はありません。継承資格者は今、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下、常陸宮正仁親王殿下と、きわめて限られています。
(編集部分析)竹田氏の一連の主張が最後に指し示しているのは、親等という一つの数字ではない。「日本の皇室は、天皇家という名字の家族ではなく、父系でつながる皇統を根幹としてきた国のかたちそのものだ」という一点である。守るべき優先順位ははっきりしている。
- 第一に、男系による皇統の連続を絶やさないこと。これが国体の背骨であり、他のすべてに優先する。
- 第二に、そのための制度(旧宮家系男系男子の養子案など)を、拙速ではなく国民の理解を得ながら丁寧に整えること。
- 第三に、「女性でよいなら女系でも」という混同に流されないこと。一度越えれば戻れない一線を、雰囲気で越えてはならない。
(編集部分析)天皇は日本そのものであり、日本の代表である。その男系の皇統を確実に次代へ手渡すことは、外交でも経済でもない、この国の存立にかかわる最重要事だ。手続きの精度を問うのも、親等の数字を検証するのも、突き詰めればこの一点――皇統を守り、日本人としての誇りの源泉を子や孫に手渡すため――に行き着く。そこを見失わないことが、今を生きる私たちの責任だと、私たちは考える。
よくある質問(FAQ)
Q. 「女性天皇」と「女系天皇」は何が違うのですか?
A. 女性天皇は天皇本人が女性でも父方が歴代天皇につながる「男系女子」で、歴史上8人10代の前例があります。女系天皇は父方が皇統に属さない天皇で、日本の歴史に一般に認められる前例はありません。両者を認めるかは、まったく別の判断です。
Q. 「36〜38親等」という数字は間違いなのですか?
A. 親等は共通祖先までの世代数の合計なので、何百年も前に分かれた家系なら36〜38親等になること自体は計算上おかしくありません。ただし竹田恒泰氏は、皇位継承で問われるのは血縁の遠近ではなく「男系が続いているか」であり、数字だけを示すのは本質を覆い隠す、と批判しています。
Q. 旧宮家養子案では、誰が皇位継承資格を持つのですか?
A. 2026年成立の改正では、養子となった本人には皇位継承資格はありません。継承資格を持つのは、養子となった後に生まれた子・子孫(男子)です。この点には国会で野党から「十分に議論されたのか」との批判も出ました。
Q. 竹田恒泰氏の主張の核心は何ですか?
A. 「血統(男系血統の連続)」と「血縁(親等の遠近)」はまったく別の物差しだ、という点です。旧宮家は現陛下と血縁上は遠くても、父系をたどれば皇統につながっており、旧宮家養子案は男系継承を守る現実的な方策だ、と竹田氏は支持しています。

